日本航空、機長また飲酒でフライト遅延 国交省の改善勧告後、再発防止策の「禁酒令」も破る

日本航空(JAL)は、機長による飲酒事案が再び発生したことを受け、2025年9月4日に記者会見を開き、深く謝罪しました。この事案は、24年4月の米国、同年12月の豪州での機長による飲酒トラブルに続くもので、国土交通省からの業務改善勧告後、JALが導入した再発防止策の「滞在先での禁酒令」下で起きたことから、その深刻さが浮き彫りとなっています。国土交通省は事態を重く見て、9月3日に羽田空港内のJALオフィスに監査に入りました。

国交省の「業務改善勧告」とJALの「5本の柱」

JALでは過去にも運航乗務員の飲酒事案が相次ぎ、2024年12月には国土交通省から行政指導にあたる業務改善勧告を受けていました。これに対しJALは、2025年1月に「飲酒対策を含む安全確保に関する社内意識改革」「運航乗務員の飲酒傾向の管理の更なる強化」など「5本の柱」からなる再発防止策を提出。特に、滞在先での「禁酒令」を導入するなど、飲酒に関する管理体制を強化する姿勢を示していました。今回の新たな飲酒事案は、まさにこうした厳格な措置が講じられている最中に発生し、JALの安全管理体制に対する疑念を深めることとなりました。

ホノルル発中部便の機長、飲酒の詳細とフライトへの影響

今回飲酒事案を起こしたのは64歳の男性機長です。この機長は8月28日(現地時間)ホノルル発中部行きJL793便(ボーイング787-9型機)に乗務する予定でしたが、飲酒が発覚したため乗務できなくなりました。代替の運航乗務員の手配が必要となったことで、JL793便は出発が2時間10分遅延しました。この遅延は、後続の羽田行き2便にも波及し、最大で18時間の遅れが生じるという大きな影響を与えました。

JALのボーイング787-9型機。今回飲酒事案を起こした機長が乗務予定だった同型機が羽田空港に駐機している様子。JALのボーイング787-9型機。今回飲酒事案を起こした機長が乗務予定だった同型機が羽田空港に駐機している様子。

規定違反と機長の飲酒経過

JALの従来の規定では、乗務前のアルコール検査で呼気1リットルあたり0.00ミリグラムであることを求めるだけでなく、「飛行勤務開始12時間前に体内に残存するアルコール量を4ドリンク相当以下に自己制限すること」(純アルコール換算で40グラム、ビールのロング缶2本分、日本酒1合分に相当)を義務付けていました。さらに、2024年12月からは、滞在先での全面的な「禁酒令」を導入し、規定をより厳格化していました。

今回事案を起こした機長の飲酒経過は以下の通りです。

  • 8月27日 10時35分: 羽田発ホノルル行きJL72便でホノルルに到着。
  • 12時15分: ホテルに到着。
  • 12時30分: ホテル近くのコンビニで、アルコール度数9.5%のビール(568ミリリットル)を2本購入。
  • 12時45分: ホテルの自室で飲酒を開始。
  • 14時頃: 同じコンビニで同種のビールを2本追加購入。
  • 14時30分頃: 追加購入したビールのうち1本を飲み終える。これにより、飲酒したビールは合計3本となりました。

この機長の行為は、飛行勤務開始12時間前の飲酒制限に加え、特に2024年12月から導入された滞在先での「禁酒令」に明確に違反しており、JALが掲げる「再発防止策」が機能していない現状を露呈しました。

まとめ

JALで再び発生した機長の飲酒事案は、過去のトラブルと国交省からの業務改善勧告、そしてJAL自身の再発防止策にもかかわらず、安全運航への意識改革が十分に浸透していない現状を強く示唆しています。今回の事案は大規模なフライト遅延を引き起こし、多くの利用者に影響を与えました。JALには、再三の事態を重く受け止め、徹底した原因究明とより実効性のある再発防止策の実行が求められます。

参考文献