9月7日、石破茂首相が「参院選の選挙結果に対する責任は総裁たる私にある」と述べ、辞任の意向を表明しました。この突然の発表は政界に大きな波紋を広げ、次のリーダーシップを巡る議論が活発化しています。JNNが実施した「次の総理にふさわしいのは?」という世論調査では、小泉進次郎氏と高市早苗氏が同率19.3%でトップに立ち、国民の期待が集まる一方で、総裁選不出馬を表明している石破氏自身は8.6%、国民民主党の玉木雄一郎氏が5.8%と続きました。早期に出馬の意向を固めた茂木敏充氏は0.9%と、出遅れ感が否めません。
石破茂首相の辞任表明。首相官邸での会見で厳しい表情を見せる石破氏。
小泉進次郎氏が握る「次期総理」への鍵
今回、石破首相の辞任のキーマンとなったのは、すでに「次期総理・総裁」に最も近い男と目されている小泉進次郎氏でした。事態が動いたのは9月6日夜、首相公邸で行われた小泉氏、石破氏、そして菅義偉副総裁による三者会談です。菅氏が約30分で公邸を後にした後も、小泉氏はさらに1時間半にわたり石破氏と向き合い、「党内の分断は避けてほしい」と、自ら身を引くよう粘り強く説得したと報じられています。
自民党関係者によると、「石破氏にとって、昨年の総裁選決選投票で支えてくれた菅氏からのプレッシャーも大きかったが、それと並んで、農林水産大臣に任命したばかりの小泉氏から“決断”を迫られたことも非常に重かった」といいます。これはまさに「進次郎よ、お前もか」という心境だったでしょう。この説得により、石破氏は総理だけが持つ「解散」という“伝家の宝刀”を封じられることとなり、首相の権限行使は著しく制限されました。
求心力低下と党内からの「総裁選前倒し」要求
そもそも、石破氏には有効な「切り札」がほとんど残されていませんでした。総裁選の前倒し論が浮上した際、石破氏が「名前を名乗れ」と踏み絵を迫ったにもかかわらず、党内からは次々と前倒し要求書に署名したことをSNSなどで公開する動きが相次ぎました。これに焦り、解散総選挙をちらつかせると、かえって党内の猛反発を招き、石破氏の求心力はますます低下の一途をたどることになりました。
9月2日の「転機」:頑なになった首相と幹部の苦言
自民党の中堅議員が「大きな転機になったのは9月2日だった」と語るように、この日が事態を決定づける重要な日となりました。両院議員総会で参院選の敗因を盛り込んだ「総括」が承認された後、森山裕幹事長が退任の意向を示し、その直後には自民党所属議員に対して「総裁選挙実施の要求」と題する文書が配布されました。これを受け、X(旧Twitter)では「署名した」と写真を公開する議員が続出。この頃から、石破首相はそれまで以上に頑なになり始めたといいます。
党幹部の一人は「党の分断を避けるためには自ら身を引いていただくしかないと意見具申したら、そのあと首相が電話に出なくなった」とぼやいていました。最終的には菅氏、小泉氏との三者会談によって説得が試みられましたが、もしあの会談がなければ、石破首相が頑なに自身の立場を貫き、解散総選挙に走っていた可能性も考えられると指摘されています。
結論
石破政権が末期状態にあったことは明白ですが、もし解散総選挙が実施されていれば、それは国民が直接、民意を示す貴重な機会となったことでしょう。党内の分裂を避けるという大義名分の下、首相が辞任に至った今回の経緯は、政治の舞台裏における権力闘争と駆け引きの複雑さを浮き彫りにしています。今後の自民党総裁選、そして新たな日本のリーダーが誰になるのか、引き続き注目が集まります。