JICAアフリカ・ホームタウン事業に「移民殺到」誤解、自治体に抗議電話殺到の背景

各地の自治体とアフリカ諸国との間で進められる国際交流事業「JICAアフリカ・ホームタウン」を巡り、一部で「日本に移民が押し寄せる」との誤解が広がり、関係する自治体へ抗議の電話やメールが殺到する事態が起きている。この混乱は、地方自治体の通常業務に甚大な支障をきたすほどであり、不正確な情報が社会に与える影響の大きさを浮き彫りにしている。

役所業務を麻痺させた抗議の波

自治体への抗議電話といえば、過去には頻繁に出没するクマの駆除を巡り「なぜ野生動物を殺すのか」といった声が殺到するケースが定番だった。しかし今回の騒動では、「日本が乗っ取られる」「移民で埋め尽くされてしまう」「外国人犯罪が多発する」といった、より深刻な懸念に基づく批判が全国から一斉に寄せられた。千葉県木更津市の担当者によると、先月25日から今月1日までの6日間(土日を除く)で、代表電話にかかってきた6400件のうち、本件に関する問い合わせが大多数を占めていたと推測されている。

電話対応に追われる千葉県木更津市の職員電話対応に追われる千葉県木更津市の職員

電話対応に追われる千葉県木更津市の職員ら。JICAアフリカ・ホームタウン事業に関する抗議電話が殺到し、業務に支障をきたしている様子。

JICA国際交流事業とTICAD報道が引き金に

この混乱の発端は、先月21日に木更津市が「JICAアフリカ・ホームタウン」事業においてアフリカ西部にあるナイジェリア連邦共和国のホームタウンに認定されたことにある。国際協力機構(JICA)は同事業で、木更津市を含む四つの地方自治体をホームタウンとして認定し、各自治体は様々な形でアフリカ諸国との国際交流を深めていく計画を発表した。

先月20〜22日に横浜で開催された日本政府主催の「アフリカ開発会議(TICAD)」の中で認定式が行われ、そのことが報道されると、抗議の電話が殺到し始めた。木更津市の担当者は、電話を寄せる層が男女問わず多岐にわたり、関西圏のテレビで放送された直後には大阪、名古屋、九州からも問い合わせがあったと明かす。

同様に本事業でアフリカ東部のタンザニア連合共和国と交流すると発表された山形県長井市の担当者も、今月2日10時までの8日間でメールが延べ1245件、電話もピーク時には毎日200件以上あったと語る。特にユーチューブなどで役所の連絡先が掲載されたことで、電話の大半は市外からのものであり、その影響で一時的に長井市の通常業務が全くできなかったという。

誤解が生んだ社会的な波紋

今回の事態は、国際交流事業が「移民受け入れ」という誤った形で解釈され、インターネット上での情報拡散が拍車をかけた結果と言える。JICAアフリカ・ホームタウン事業は、文化交流や経済協力などを目的としたものであり、大規模な移民受け入れを意図するものではない。しかし、情報が正しく伝わらないことで、自治体の職員が抗議対応に追われ、本来の業務が滞るという事態に発展した。

結び

JICAアフリカ・ホームタウン事業を巡る一連の抗議電話騒動は、SNSや動画サイトを通じて誤情報が瞬く間に広がり、社会に大きな混乱と分断をもたらす現代社会の課題を浮き彫りにしています。国際協力や地方創生に資する有意義な取り組みが、不正確な解釈によって阻害されることのないよう、行政機関はより一層、事業内容の透明性と正確な情報発信に努めることが求められます。同時に、情報を受け取る側にも、その内容を吟味し、多角的に確認する情報リテラシーが不可欠であることを示唆しています。

参考資料

Source link