長きにわたり続いた自公連立政権が公明党の離脱表明によって解消され、自民党の新総裁に就任した高市早苗氏(64)が率いる自民党は、新たな連立の枠組みを模索し、日本維新の会へ急速に接近している。この動きは日本の政局に新たな局面をもたらし、各党の戦略と党首たちの動向が注目を集めている。特に、国民民主党の玉木雄一郎代表の「総理になる覚悟」を巡る発言と、その後の党の立ち位置には、世論から厳しい視線が向けられている。
自民党の新総裁、高市早苗氏。複雑な連立政権交渉を担う
自民党と日本維新の会の急接近
16日、日本維新の会の藤田文武共同代表(44)は、自民党との政策協議後の記者会見で、「(自民との)信頼関係が一つ一段上に進んだ」と述べ、両党の関係強化を示唆した。維新側は「副首都構想」「社会保障改革」「企業・団体献金の廃止」といった独自の政策を交渉カードとして提示しており、これらの条件が合意に至れば、自民・維新による新たな政権枠組みが現実味を帯びる。この動きは、自公連立解消後の与党再編の鍵となる可能性が高い。
野党共闘の模索と維新の動き
一方で、藤田氏は15日に立憲民主党の野田佳彦代表(68)、国民民主党の玉木雄一郎代表(56)と会談し、首班指名選挙に向けた野党候補者の一本化を念頭に協議を行っていた。しかし、この野党会談の直後、維新の吉村洋文代表(50)と高市氏が会談。その結果、16日から自民党と維新が政策協議を開始することが決定された。この一連の動きは、維新が与野党双方に働きかける「多角外交」を展開していることを示している。
国民民主党・玉木代表の「二枚舌」発言とXでの反応
玉木氏は15日夜10時に行ったライブ配信で、自民党と維新の接近に驚きを隠せず、次のように不満を漏らした。「つい数時間前まで藤田共同代表と野党の統一候補を目指して、けっこう藤田さんも真剣に議論していただいてたなぁと思ってたんですけど。“なんだそれは自民党と連立で握ることが決まってたのか”みたいな感じで、ちょっと二枚舌みたいな感じで扱われて」。さらに「この3者協議はなんだったんだと、いうことでね。自民党とやるんだったら最初から言ってよって感じですよね」と、維新の対応を厳しく批判した。
高市氏は就任当初から、新たな連立枠組みの本命として国民民主党を重視していたが、玉木氏は15日に高市氏との会談を終えた後も、連立入りには慎重な姿勢を崩さなかった。そのため、玉木氏の“恨み節”に対して、X(旧Twitter)では同情よりもむしろ、維新に“出し抜かれた”として失望する声が多数上がった。
- 「玉木さん総理大臣になる覚悟はありますとか言ってるからだよ、、」
- 「玉木さん、フラフラしてるから先超されたよ。維新がやるならうちはいらないよねって言い方も子供っぽくて。総理大臣になる覚悟はありますとかそんなこと言ってる暇あったらさっさと高市さんに貸しを作れば良かったのに」
- 「『総理になる覚悟はある』リツミンの方をチラっと見る。その間に維新が自民と握手。駄目だ、玉木じゃ。榛葉さんと交代しろ!」
「総理になる覚悟」と機会損失
10日、玉木氏は自公連立解消を受けた会見で、「内閣総理大臣を務める覚悟はある」と繰り返し述べ、同日に更新したXでも「私には内閣総理大臣を務める覚悟があります」と明言していた。同時に、首班指名の対象として自身の名前を挙げる可能性を排除しない立憲民主党に対して、「だからこそ、政権を共にする政党には、安全保障を軸とした基本政策の一致を求めています」「首班指名の対象として私の名前を出していただき、身が引き締まる思いです」というメッセージを記していた。
しかし、玉木氏は一転して首相争いから蚊帳の外に置かれる形となった。上記の批判が寄せられた背景には、玉木氏が総理大臣の座をうかがう間に、政策面で折り合いがつく部分が多い自民党との協力の機会を逃してしまったという見方がある。政治部記者は、「玉木氏はいち国政政党の党首ですから“覚悟がある”というのは本音でしょう。ただ、少なくとも支持者にとっては、玉木氏が総理の座に“固執している”という見方は納得できないところがあるでしょう。玉木氏は与党としての連立入りと同時に、立憲とも安全保障などの政策面で隔たりがあるため、野党との連立形成にも慎重でした」と解説する。さらに、「維新を“二枚舌”と揶揄するのも適切とは言えないのではないでしょうか。政策実現に向けてあらゆる可能性を模索するのが政党の役割で、その点、維新は好機と捉えて自民との交渉のテーブルに就いたわけです」と付け加える。
玉木氏の「覚悟」投稿削除の波紋
そんな中、玉木氏の「覚悟」に変化があったと注目されている。玉木氏はXで「私には内閣総理大臣を務める覚悟があります」と表明した投稿を固定表示していたが、これが16日までに固定から外されていたのだ。この取り下げが一部で注目を集め、Xユーザーからは以下のような声が上がった。
- 「所詮は、風見鶏」
- 「本当にわかりやすい人間だ」
- 「引っ込めるのが早い覚悟」
- 「覚悟なかったんや…」
前出の政治部記者は、「少なくとも15日の夜の時点では“首相になる覚悟”投稿が固定されていたようですが、玉木氏は頻繁に固定の投稿を入れ替えるので、今回の取り下げに他意があるのかどうか、そこはわかりません。ただ、維新が自民と政策協議を開始することを決定した日ということもあり、トーンダウンしたと見られてしまいかねないタイミングでした」と述べる。
結論
自公連立解消後の日本の政局は、高市自民党と日本維新の会の接近を軸に大きく動き出している。野党共闘を模索しながらも与党との連携の可能性を探る維新の戦略と、その中で機会を逸したかのように見える国民民主党・玉木代表の動向は、今後の政権の枠組みを大きく左右するだろう。玉木氏は16日に応じた産経新聞のインタビューで、首相指名選挙に向けた立憲、維新との協議は「一応、継続協議になっている」と説明している。一世一代の“首相になるチャンス”を前に、玉木氏がどのような決断を下し、日本の政治地図がどう塗り替えられていくのか、その行方は国民の大きな関心事である。