人気お笑いコンビ・ニューヨークの屋敷裕政が、先日放送された千鳥MCの番組『酒のツマミになる話』(フジテレビ系)にサブMCとして出演し、ゲストとの軽妙なやり取りを見せた。この番組で、SKE48の相川暖花が明かしたある悩みに、屋敷が示した驚きのリアクションが注目を集めている。
相川は「握手会でファンの人が1人しか来なかったんですよ。私、アイドル11年目で……」と長年のアイドル活動における苦境を吐露。この衝撃的な告白に、屋敷は思わず「えー!」と驚愕の声を上げた。11年ものキャリアを持つアイドルが直面したこの「ファン1人事件」は、多くの視聴者に驚きを与えたことだろう。しかし、その屋敷自身も、かつては現在の活躍からは想像できないほどの不人気に悩み、苦しんでいた時期があったのだ。
ニューヨーク、かつての苦悩と模索
ニューヨークは、吉本興業のホープとして早くから期待されていた若手芸人コンビである。結成3年目にして、将来有望な若手が集結したバラエティ番組『バチバチエレキテる』(フジテレビ系)にレギュラーとして抜擢されるなど、周囲の期待は高かった。しかし、筆者が彼らにインタビューしたのは、まさにその期待と現実のギャップに苦しんでいた時期だった。当時、彼らは芸歴10年目を迎えていたが、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)や『キングオブコント』(TBS系)といった主要な賞レースでは、一度も決勝に進出できておらず、世間的なブレイクには至っていなかった。
屋敷はその頃の不甲斐なさをこう語っている。「いまやってる漫才のつかみネタがあるんですよ。それが『僕らのことを知ってる人は拍手してください』って言うたら、拍手がチョロチョロチョロな感じで。『じゃあ知らない人?』でバァーっと拍手があって、『ちょうど半々ぐらいですね』『どこがやねん!』というネタを10年目でやってるんですよ。結成10年目で、こんなネタやりたくないです。なんか悲しくなってくるんですよ(笑)。だから一回売れときたいです」。この言葉からは、人気がないことへの切実な悩みと、芸人としてのプライドが感じられる。
人気お笑いコンビ「ニューヨーク」の嶋佐和也(左)と屋敷裕政(右)。無名時代を乗り越え、今やゴールデン番組でも活躍。
成功への戦略転換:賞レースだけではない道
かつては「賞レースで優勝して売れたい」と語っていたニューヨークだが、結果が出ない状況の中で、彼らの思考は変化していった。「いままでは『賞レースで優勝して売れたい』と言ってたのですが、それは効率が悪いなと思いだして。それって一年に一回のチャンスにかけているわけじゃないですか」。彼らはこの一年に一度のチャンスだけに賭けるのではなく、多角的なアプローチを模索し始める。
具体的には、単独ライブの開催やYouTubeチャンネルの開設など、自分たちの手で露出を増やし、ファンを獲得するための努力を並行して行った。「どうせ賞レースのための努力はやるので、それ以外の努力も並行してやっておいたほうがいいなと思いました」。この戦略転換の背景には、多方面で活躍するチョコレートプラネットの存在があったという。「チョコレートプラネットさんなんかは、売れるためのことを全部やっているじゃないですか。SNS、ものまね、YouTube、賞レースと。チョコプラさんが売れたことで、『いまの時代、俺らみたいな普通の見た目のやつは厳しいよ』って言い訳が言えなくなりましたね。だから僕らも、やれることを全部やらないと」。彼らは自らを奮い立たせ、「やれることはすべてやる」という決意を固めた。
ブレイクの到来、そして現在の活躍
筆者がニューヨークにインタビューを行ったのが2019年3月。その年の12月、『M-1グランプリ』でニューヨークは念願の初の決勝進出を果たし、これが大きな転機となった。その後、彼らの快進撃は止まらない。『キングオブコント』では2020年、2021年と2年連続で決勝に進出し、『M-1グランプリ』も2020年に再びファイナリストとなる。これらの実績が彼らを一気にブレイクへと導き、今や屋敷はゴールデン番組のサブMCを務めるほどの人気芸人へと成長を遂げたのだ。
相川暖花への希望:未来の可能性
今回の屋敷裕政のリアクションと彼の過去の経験は、まさに相川暖花が直面する苦境への共感と、そして未来への希望を示唆している。かつて「ファン1人事件」と似た知名度の低さに悩みながらも、努力と戦略転換でブレイクを掴んだニューヨークの軌跡は、相川にとって大きなエールとなるだろう。5〜6年後、もしかしたらゴールデンのバラエティ番組で活躍する相川暖花の姿が見られるかもしれない。努力を続ければ、必ず道は開けるというメッセージが、ニューヨークの成功から読み取れる。
出典:インタビューマン山下