「会議好き上司」の心理を解剖:無駄なミーティングが職場に与える深刻な影響

現代の職場で問題視される「会議の目的化」は、多くの従業員にストレスを与えます。特に「ミーティング依存症」と称される会議好きの上司の下では、その影響は深刻です。心理学者の舟木彩乃氏の分析から、その心理的背景と職場への影響を深く掘り下げていきます。

熱弁を振るう会議好きの上司。無駄な会議が部下に与える心理的負担とは熱弁を振るう会議好きの上司。無駄な会議が部下に与える心理的負担とは

「ミーティング依存症」上司の実態とその影響

営業一課の課長である久本さん(30代、仮名)は、上司のF部長(50代、男性)があまりに頻繁に招集するミーティングに疲弊していました。営業部門は四つの課から成り、課長は部長に従う名ばかり管理職でした。その中で週に4日も開かれる会議は、無駄と知りつつも従わざるを得ないものでした。これらの会議は本来60分のはずが、実際には90分以上に及び、オンラインでの参加は認められません。議題は週の目標や振り返りと“漠然”と決められていますが、各課長からの簡単な報告が終わると、F部長の独壇場と化し、延々と持論が展開されます。特に売上目標が未達成の場合、F部長の熱い営業哲学や学生時代の体育会気質に基づく「気合い」論が始まり、昭和の体育会活動をそのまま職場に持ち込んでいるかのようでした。

意見を封殺し、独裁化するミーティングの様子。承認欲求の強い上司の心理意見を封殺し、独裁化するミーティングの様子。承認欲求の強い上司の心理

意見封殺と「承認欲求」:上司の心理的背景

F部長は会議中に「何か意見は?」と問いかけるものの、その方針と異なる意見が出ると徹底的に問い詰めるため、60分の会議が3時間に及ぶこともありました。結果として、誰も意見を言わない「沈黙の会議」と化してしまいます。しかし、意見が出ないこと自体もF部長にとっては不満であり、「なぜ誰も意見を言わないのか」と激昂することさえありました。これは自由に意見を求めているのではなく、自身の考えに賛同し、賞賛してほしいという「承認欲求」の表れと分析されます。同時に、何か問題が生じた際に「全員で話し合って決めた」という形式を盾にするための“保険”としての意味合いも持ち合わせていたのです。

「会議好き上司」による無駄なミーティングは、単なる時間浪費に留まらず、部下のモチベーション低下や生産性悪化に直結します。承認欲求や責任転嫁の心理が背景にあるこれらの会議は、健全なコミュニケーションと職場の活力を奪うもの。企業は、建設的な職場環境構築のため、本質的な対策を講じることが急務と言えるでしょう。

参考文献: 舟木彩乃 著『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社)より一部抜粋・再構成。