7月18日、京都。
祇園祭・前祭の山鉾巡行から一夜明け、連日の祭り取材から解放されて、久々の休日を迎えようとしていたところに、一本の電話がかかってきた。
「アニメスタジオで火事。現場に行ってほしい」
。大きな被害になるかもしれない。現場は駅から近い。電車で向かった。「ガソリン」「放火」…。次々に情報が入る中、煙が上がる「京都アニメーション第1スタジオ」が見えてきた。
現場には着いたが、規制線で近づけない。近くの建物に上がると、スタジオ屋上での救助活動が見えた。同時に、逃げ遅れた人が多数いるとの話が聞こえてきた。火災に巻き込まれた人のことを考えるとつらく、シャッターを押す指の動きが鈍りそうになるのをこらえながら撮影した。
事件翌日には、スタジオ近くに犠牲者を悼む献花が積み上がった。英語や中国語のメッセージが添えられているものも多くあった。
「人生を変えてくれた」「人生を救われた」。取材する中で、「人生」という言葉を多く耳にした。京アニ作品の力と、ファンの悲しみ、怒りを、日々現場で感じた。
8月2日、一部犠牲者の身元が発表され、遺族の元に取材に向かった。悲しみの中にいる人を傷つけることにはならないか。葛藤の中、伝える使命だけを考え、必死にカメラを向けた。しかし、取材後、残された家族の人生を思った途端、涙が止まらなくなった。
36人もの罪なき人々が犠牲になった事件。どんなに時間がたっても、あの日を忘れることはできない。
(写真報道局 永田直也)