渋谷ハロウィン厳戒態勢の裏側:変化する「渋ハロ」の様相と新たな集結地

今年もハロウィンの季節が到来し、例年通り多くの若者や外国人観光客が渋谷に集まり、「渋ハロ」が再び注目を集めています。しかし、近年「渋ハロ」を取り巻く環境は大きく変化しており、特に2022年に韓国・梨泰院で発生した群衆事故は、日本の雑踏警備に甚大な影響を与えました。この教訓を受け、渋谷区は2023年に区長が「渋谷に来ないで」と異例のメッセージを発信。さらに2024年には路上飲酒を通年で禁止する条例改正に踏み切るなど、安全対策は年々強化の一途をたどっています。今年の渋谷では、厳重な警備体制と予期せぬ天候が相まって、例年とは異なるハロウィンの光景が広がっていました。

渋谷ハロウィンを楽しむ外国人観光客と若者たち、イベントの賑わいを示す光景渋谷ハロウィンを楽しむ外国人観光客と若者たち、イベントの賑わいを示す光景

強化される渋谷のハロウィン対策:梨泰院事故からの教訓

渋谷区は今年のハロウィンに向けて、徹底した安全対策を講じました。全国紙社会部記者によると、事前に渋谷駅周辺には「禁止だよ!迷惑ハロウィーン」と書かれた無数の幟が掲げられ、参加者へ注意を促していました。雑踏事故防止の観点から、昨年は18時閉園だった宮下パークは今年は15時に閉園時間を前倒し。さらに、10月30日から11月1日早朝にかけては、ハチ公像に囲いが設置され、周辺への密集を防ぐ措置が取られました。渋谷区は警備員約125人を配置し、ハチ公前広場などに監視台を設置するなど、まさに厳戒態勢が敷かれていたのです。取材班が渋谷駅に足を運んだ際も、すでに多くの警備員による厳重な警備体制が確認されました。

雨天が変えた人々の流れ:スクランブル交差点の異変

厳戒態勢が敷かれる中、今年の渋谷ハロウィンには予期せぬ要素が加わりました。15時ごろから激しい雨が降り始めたのです。例年であれば午後20時ごろから人が集中し始めるスクランブル交差点やセンター街を歩く仮装した人は、まばらな状態でした。多くの人々が雨を避け、混雑のピークは過ぎたかのように見えましたが、どうやら今年の“ホットスポット”は、これまでとは異なる場所に移動していたようです。

意外な”ホットスポット”へ:屋根付き空間が賑わいの中心に

当日は交通規制により、スクランブル交差点から宮益坂交差点方面への通り抜けが禁止されていました。警備が主にスクランブル交差点からセンター街にかけて集中していた一方、その反対側、渋谷スクランブルスクエア付近の一帯には、多くの人でごった返していました。このエリアは屋根があるため雨宿りができることもあり、仮装やコスプレをした人々、そして一緒に写真を撮影しようと列を作る人々で賑わっていたのです。ドイツから「渋ハロ」のために来日したという女性は、「4週間の日本旅行に来ているの。日本に来るのは2度目だけど、とっても好きな国よ! 昨日は大阪のハロウィンにも行ってきたけれど、街ゆく男の子から次々とアタックされて。ソー、クレイジーだったわ(笑)」と笑顔で語りました。

同じく雨宿り可能な渋谷駅の地下道も、今年の隠れたホットスポットとなっていました。「SHIBUYA 109」直下のA2出口付近では、『鬼滅の刃』のコスプレをした集団がお互いに写真を撮り合い、その周囲には多種多様な衣装に身を包む人々が集まっていました。アメリカから訪れたという女性は快く写真撮影に応じ、また地下の別の場所では中国から来た女性グループが日本アニメのキャラクターになりきったコスプレ姿を披露していました。今年は、例年以上に外国人の姿を多く見かけ、その格好はガイコツやゴーストのような“仮装”よりも、映画やアニメのキャラクターの“コスプレ”がかなりの割合を占めていたのが特徴的でした。

今年の渋谷ハロウィンは、過去の教訓から強化された安全対策と、予期せぬ雨という自然要因が重なり、従来の「渋ハロ」とは異なる様相を呈しました。メインストリートの混雑は緩和されたものの、屋根付きの商業施設周辺や地下道といった場所が新たな集結地となり、特に多くの外国人観光客が日本のアニメや映画のコスプレを楽しむ姿が目立ちました。この変化は、祭りの安全性向上への努力と、訪日観光客の増加、そして多様化する日本のハロウィン文化の進化を象徴していると言えるでしょう。


参考文献