“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「 有働由美子のマイフェアパーソン 」。今回のゲストは、ノンフィクション作家の清武英利さんです。
【画像】現在はロケット博士をテーマにした小説『もつれ雲』を執筆中の清武氏。手には貴重な実物も
読売新聞社で数々のスクープを報じてきた清武さんは、2004年にジャイアンツの球団代表に就任。コーチ人事をめぐって読売新聞主筆の渡邉恒雄氏と対立し、いわゆる「清武の乱」を起こすなど、紆余曲折の道のりを歩まれてきました。
有働 すみません、今になってぶっちゃけますけど、以前から「清武さんって、めっちゃ怖い人だ」と思っていたんです。「清武の乱」では、あのナベツネさんに「鶴の一声で巨人軍を私物化することは許せない」と会見で訴えて球団代表を解任され、読売新聞とは裁判にもなった。私も当時はNHKのアナウンサーとして、「大変だな」と思いながらニュースで見ていましたけど、その時のイメージが強くて。実は今日も、朝から「ああ、憂鬱だわ……」って(笑)。
負ける戦ならやらないの?
清武 僕のことをパワハラとか言う人もいましたけど、それはあくまでも昔の話ですから(笑)。
有働 それで知り合いの記者に「清武さんってどんな人なの?」って聞いてきたんです。一人は私の信頼する同世代の記者で「とにかくすごかった。読売を辞めた後も『しんがり 山一證券 最後の12人』(講談社)のように掘り下げて取材した作品を残していることに頭が下がる」と絶賛していた。でも、もう一人は「『清武の乱』はどの程度の勝算があったのか。戦をやるなら勝たなきゃいけない。あの会見は負け犬の遠吠えだったんじゃないか」と。ここまで意見が分かれることを、ご本人はどう思いますか?
清武 まあ、仕方ないですね。でも「負ける戦ならやらないの?」って言いたいですよ。たしかに負ける可能性もあると思ったけど、当時の弁護士さんからは「勝敗は自分の心が決めることで、志があれば負けなんてないんですよ」と言われて、その言葉が僕は腑に落ちた。裁判で勝つとか、負けるとか、大事なのはそこではなくて、ペンを握って書き続けることだと思ったんです。それこそが最も相手の心に響くんだと。






