政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が11月9日未明、兵庫県警に逮捕され、翌日午前には神戸地検に移送されました。容疑は、今年1月18日に自死した竹内英明元兵庫県議に対する名誉毀損罪です。この逮捕は、公共の言論空間における偽情報拡散の責任を改めて問いかけるものとなりました。
逮捕から勾留、そして「自白」へ
神戸地検への移送時、立花氏はテレビカメラに向かって微笑み、サムズアップポーズを見せるなど、当初は無反省な態度をアピールしているように見えました。しかし、この態度は間もなく一変します。11月14日、接見した石丸幸人弁護士は、「真実相当性については争わず、『自白』として手続きを進める」と表明。立花氏が容疑を認め、遺族に謝罪する意向であることを明らかにしました。この方針転換は、2023年3月に不正競争防止法違反などで有罪判決が確定している立花氏の収監を避けるため、「立花氏にとって最も良い方法をとる」との判断によるものでした。しかし、遺族は立花氏側からの示談の申し出をきっぱりと拒否しています。
送検のため兵庫県警本部を出る立花孝志氏
竹内元県議に対する誹謗中傷の内容
今回の逮捕の端緒となったのは、8月に竹内元県議の遺族が行った6件の刑事告訴です。これらの告訴はすべて兵庫県警に受理されました。告訴内容には、昨年12月の大阪府泉大津市長選挙の選挙戦において、立花氏が「竹内氏はめちゃヤバい。警察の取り調べを受けているのは、たぶん間違いない」と発言したこと、竹内氏の逝去翌日にX(旧ツイッター)に「竹内元県議は、昨年9月頃から兵庫県警からの継続的な任意の取り調べを受けていました」と投稿したこと、さらにYouTubeでの配信内容などが含まれています。
兵庫県警による異例の「事実無根」表明
立花氏の一連の主張に対し、兵庫県警の村井紀之本部長(当時)は今年1月20日、県議会という公の場で異例の対応を取りました。本部長は「竹内氏を被疑者として任意の取り調べをしたことはない。ましてや、逮捕するという話はまったくない」と述べ、立花氏の主張を完全に否定しました。さらに「まったくの事実無根で、明白な虚偽がSNSで拡散されていることは極めて遺憾」と強い遺憾の意を表明しました。捜査機関が特定の情報についてここまで明確に「事実無根」と断じるのは、極めて稀なことです。
立花氏の謝罪と偽情報拡散の教訓
兵庫県警による明確な否定を受けて、立花氏はその翌日、「(竹内氏の逮捕は)事実ではなかった」と謝罪しました。この一連の出来事は、SNSなどを通じた情報拡散の容易さと、それがもたらす深刻な影響、そしてその情報が虚偽であった場合の責任の重さを改めて浮き彫りにしています。私たち有権者は、公人が発信する情報の真偽を慎重に見極め、安易な偽情報の拡散が社会に与える負の影響について深く考える必要があるでしょう。





