11月7日の衆議院予算員会での高市早苗首相による「台湾有事」発言が波紋を広げている。立憲民主党の岡田克也衆院議員の質疑に対して、高市首相は「(台湾有事が)戦艦を使って、武力の行使を伴うものであれば、これは“どう考えても”存立危機事態になりうるケース」と答弁した。この答弁に中国は激しく反発し、外交問題に発展している。一方、政権の支持層からは「しつこく聞いた岡田氏が悪い」という批判まで出始めている。当の岡田氏はどのような意図でこの質問をしたのか、そして自身への批判をどう受け取めているのか。本人を直撃した。
* * *
存立危機事態とは2015年に成立した安全保障関連法で作り出された概念で、「日本と密接な関係にある国への武力攻撃で日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」と判断した場合に、限定的な集団的自衛権の行使ができるとするものだ。
これまで、安倍政権以降の歴代政権も台湾有事や存立危機事態について問われてきたが、いずれも「個別具体的な状況に即し、すべての情報を総合して判断することになるため、一概に述べることは困難」として明言を避け続けてきた。
高市首相も、はじめはペーパーに目を落としながらこれに沿った「模範解答」をしていた。ただ、続けて岡田氏は「例えばバシー海峡(台湾南東部とフィリピン領バシー諸島の間の海峡)が封鎖されても日本へのエネルギーや食糧が途絶えることにはならない」として、「どういう場合に存立危機事態になるのか」と重ねて質問した。
――まず、質疑の狙いは何だったのでしょうか。特に、最初の「模範解答」でよしとせずに更問(さらとい)したのはなぜでしょう。
10年前の安全保障法制の議論の際に存立危機事態という概念が持ち上がった際、我々は違憲の疑いが濃いということで反対しました。その後、一応の定義の元で法律ができましたが、与党だった公明党の山口那津男代表(当時)と内閣法制局長官の質疑で『これまで通り(中略)我が国防衛のための必要最小限度の武力の行使に留まるもの』との答弁がなされています。しかし近年、政治家のなかからも「限定なき集団的自衛権」に近い発言が相次いでいる。当時の政府解釈をいまも維持しているのかを問うことが目的でした。かつての答弁内容が維持されていることを内閣法制局長官、そして高市首相から確認し、その上で高市首相自身も含めた近年の政治家たちの発言がそれに合致しているのかを問うたのです。






