メディアのクマ被害報道に石丸伸二氏「エンタメ化」発言が波紋 – 背景と批判を検証

11月17日に公開されたビジネスメディア「ReHacQ~リハック~」のYouTubeチャンネルにて、地域政党「再生の道」元代表の石丸伸二氏(43)とサイエンスライターの鈴木祐氏(49)の対談が行われました。対談は、鈴木氏の著書『社会は、静かにあなたを「呪う」: 思考と感情を侵食する“見えない力”の正体』を中心に、社会における認知バイアス、幸福度、テクノロジーの影響など多岐にわたるテーマで議論されました。しかし、日本各地で深刻化するクマ被害に関する石丸氏の発言が、一部視聴者の間で波紋を呼んでいます。

対談内容の概要と「メディアバイアス」の指摘

対談の中で、鈴木氏の著書に記された「大きな事件がなくなると小さな事件に関心が向かう」という話題が取り上げられました。鈴木氏は、「世の中が平和になり、経済的に安定すると、これまで問題視されなかったことが問題として浮上する現象が起きる」と説明しました。例えば、殺人や強盗といった重大犯罪が減少すると、今度はスリのような軽微な犯罪に注目が集まり、「犯罪が減っていない」という認知バイアスが生じやすくなると述べています。

石丸氏が「人間の本能として、危険に対して敏感であるということか」と問うと、鈴木氏は「ネガティブなものに意識が向くようにできており、ポジティブなことは忘れられがちだ」と回答。さらに、「目の前の危機をいかに脱し、生存するかというのが生物の本能であるため、どうしても危険な方に目がいく」と補足し、「平和な時代でも『戦争の可能性が常にある』と思いたくなるのは理解できるが、それはバイアスであると認識すべきだ」と語りました。

クマ被害報道への疑問と「エンタメ化」発言

この議論の流れで、石丸氏は「マスメディアがこのバイアスを助長し、増強する」と相槌を打ち、その例として「最近でいうとクマ」を挙げました。石丸氏は、広島県の安芸高田市長時代に獣害被害を扱っていた経験から、クマの出没が増加していること自体には理解を示しつつも、「どう考えても今はメディアがクマ事件を探しに行っていると思う」とコメントしました。

鈴木氏も笑いながら手を叩き「確かに」と同意し、「クマいねぇか、クマいねぇか」と探す仕草を見せました。石丸氏はさらに、「急にこの冬にかけて、クマが人里に出てきたわけではない」とし、「明らかにテレビが秋田県や信州の方でクマ被害を探し、見つけに行っている」と力説。鈴木氏も「間違いないですね」「それで発生数が高くなって見えるというのはありますね」と賛同しました。

石丸伸二氏の肖像石丸伸二氏の肖像

一方で、石丸氏はテレビ報道によって「みんなの意識が向かって行政、政治が対応するというのは、プラスの効果かなと思う」とも述べました。しかし、「田舎の人以外はほぼ関係がないテーマなので、なんで連日、日本全国でこの話題で持ち切りなんだろうな」と苦笑しながら疑問を呈しました。

この意見に対し、鈴木氏は「どう考えても面白いですからね。クマが出たというだけで面白いですもんね」と笑いながら返答。石丸氏が「都会の人からするとエンタメ的なニュアンスがあるんですね」と問いかけると、鈴木氏は「もうそれですよね、クマが出てくるって面白いじゃないですか。ドキドキするじゃないですか」と私見を述べました。石丸氏も、安芸高田市ではシカやイノシシの出没が日常茶飯事であり、「クマは地域性があるが、都会の方が珍しがっている」と述べ、鈴木氏も「日常と少し違うものはエンタメになる」と理解を示しました。

懸念と視聴者からの厳しい批判

石丸氏は、報道の仕方に懸念を抱いており、「うまく使われればいいが、変に面白おかしくというか話題だけで使われちゃうとよくない」と指摘。鈴木氏も「そのバランスは難しいですね」と、悩ましそうな表情を見せました。

クマ被害を取り上げるメディアの報道姿勢を疑問視した二人ですが、実際に死傷者が出ている深刻な問題であるにもかかわらず、笑いながら「メディアが探しに行っている」「都会の人からするとエンタメ」と発言したことは、視聴者に違和感を抱かせたようです。動画のコメント欄には、次のような厳しい声が寄せられています。

  • 「熊被害って笑って話せるものじゃないでしょう」
  • 「探しになんて行ってないですよ、本当に増えてるんですよ。笑いながら話す事じゃないですよ」
  • 「『熊』の話題の箇所での振る舞い見てられないな双方 明らかに報道バイアスだとする根拠が見えないし、田舎の人にしか関係ないって日本の大半は田舎やし」
  • 「熊の件は、認識がおかしくないか? 笑って話す内容ではないと思う。石丸さん、素晴らしい面もあるが、こう言うところはもっと批判されても良いと思う」

環境省データが示す深刻な現状

ウェブメディア記者は、石丸氏と鈴木氏が「メディアはクマ被害をエンタメ化すべきではない」と警鐘を鳴らした形であるとしながらも、笑いながら語ったことは裏目に出たと分析しています。「都会の人たちがクマ被害をエンタメと捉えている」という発言も、誤解を生じさせかねません。また、「メディアがクマ被害を探しに行っているから発生件数が増えて見える」という趣旨の会話もありましたが、データを見ればその深刻さは一目瞭然です。

環境省が11月17日に発表した速報値によると、今年4月から10月末までのクマによる人身被害件数は176件、被害者数は196人に上ります。これは記録が残る2006年度以降の同じ時期で過去最悪の数値であり、これまで最も被害者数が多かった2023年度を上回るペースで増加しています。政府も本格的に対策に乗り出しており、観光業などにも影響が出ていることから、決して「田舎の人」だけの問題ではありません。

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