「先月、近所の老舗のお店も閉店したね」
都内有数の飲み屋街で20年近く店を構える中華料理店の店主はそう語る。
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店主が中華鍋を振るなか、カウンターでザーサイ、空芯菜、餃子をつまみにビールをちびちび飲んでいるサラリーマンもいれば、エビチリ、回鍋肉、チャーハンなどを所狭しとテーブルに並べて分け合う大学生、スマートフォンを操作しながらレバニラ定食を黙々と食べる出勤前の女性など、メニューだけでなく、客層も実に幅広い。
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そんな町の中華料理店の倒産が増加している。東京商工リサーチによると、2025年は10月31日までで倒産件数(負債1000万円以上)が20件に達した。老舗の「町中華」ブームなどもあり、近年の倒産件数は他業種と比べて低水準だったものの、今年は一転して増加傾向にあるという。何が起きているのか。
調査を担当した東京商工リサーチ情報本部・情報部の後藤賢治さんはこう語る。
「弊社は2024年9月に『ラーメン店と好対照、中華料理店の倒産が低水準の謎』という調査結果を公表しました。これはラーメン店の倒産件数が増加している一方で、中華料理店の倒産件数は少なかったという点に着目したものです」
この調査によると、2024年1~8月の倒産件数はラーメン店が44件(前年同期比57.1%増)に達し、統計開始以来、同期間では最多となった2020年(31件)を大きく上回った。一方で、中華料理店は7件(同36.3%減)にとどまり、コロナ禍の資金繰り支援で最少だった2022年(4件)に次ぐ低水準となった。
■材料の調整がしやすい
老舗の「町中華」や、四川・東北地方など中国本土の味をそのまま提供する「ガチ中華」が人気を集め、コロナ禍でも中華料理店の倒産件数は減少。ゼロゼロ融資などの支援策も加わり、2022年には年間6件にとどまった。コロナ禍が収束した後も、他業界では倒産件数が増加するなか、中華料理店は物価高に対し、野菜の量を調整するなどの工夫で技術的に乗り切ってきたという。
「中華料理店は、職人の技術により材料の調整がしやすいことに加え、古くから小規模で営業しており不動産を所有している店舗も多い点が強みとされてきました」(後藤さん)






