2025年11月24日までに公開172日間で、映画『国宝』の興行収入が173.7億円を突破し、国内実写映画として歴代1位の座を獲得しました。これは、2003年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ！』が保持していた173.5億円という記録を、実に22年ぶりに塗り替える快挙となります。歌舞伎というテーマや約3時間という上映時間を考慮すると、公開当初、ここまでの大ヒットを予想した者はほとんどいませんでした。しかし、蓋を開けてみれば、初週3位スタートから3週目には首位に浮上し、その後も異例の伸びを記録。通常、映画の興収は初週がピークとなる常識を、『国宝』は見事に覆しました。
圧倒的な口コミ効果がロングランを牽引
この歴史的な大ヒットを支えた最大の要因は、観客が「誰かに語りたい」という強い衝動に駆られた圧倒的な口コミ効果にあります。SNSはもちろんのこと、友人知人への熱烈な推薦が次々と広がり、noteなどの長文投稿プラットフォームでも公開直後から記事数が急増しました。単なる短い感想に留まらず、映画について深く語りたくなるような作品の力が、多くの人々の心を捉えたのです。特に「歌舞伎を知らない人でも楽しめる」というキラーフレーズは、映画鑑賞へのハードルを下げ、「それなら見てみようか」と劇場に足を運ぶきっかけとなりました。この口コミの連鎖が長期間にわたって持続したことで、異例のロングランヒットが実現しました。
映画『国宝』主演の吉沢亮
戦略的なターゲット層設定と作品の完成度
近年のヒット映画がアニメ作品に代表される若年層を主なターゲットとする中、『国宝』は初期段階でシニア層の関心を引きつけることに成功しました。歌舞伎というテーマ設定や新聞広告の展開が奏功し、この世代が劇場に足を運ぶきっかけとなり、そこから徐々に若い世代へと広がりを見せました。
また、作品自体の完成度の高さも見逃せません。主演の吉沢亮と横浜流星は、撮影に臨む前に1年半にもわたる歌舞伎や舞踊の厳しい稽古を重ねていました。劇中の歌舞伎シーンでは、観客は彼らの圧倒的な美しさと存在感、そして熱のこもった演技に深く魅了されました。歌舞伎に馴染みのない層にもその魅力が伝わるような、説得力のあるパフォーマンスが、映画の評価を一層高めたことは間違いありません。
日本映画史に新たな金字塔
『国宝』の成功は、単なる興行収入の記録更新に留まらず、日本映画の可能性を広げる新たな金字塔を打ち立てました。強力な口コミ、的確なターゲット戦略、そして俳優陣の献身的な努力と作品の高い完成度が一体となり、社会現象を巻き起こしたのです。この異例のロングランヒットは、日本映画界に新たな潮流を生み出すことでしょう。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/97cf0a1ab8fb188716bb39537ea86695c4882800
