六代目山口組の「抗争終結宣言」に潜む影:分裂組織が示す抵抗の意思と警察の警戒

2025年、日本の暴力団業界は六代目山口組が一方的に「抗争終結宣言」を発したことで大きな転換期を迎えました。長年にわたる分裂抗争に終止符が打たれるかと思われましたが、この宣言が六代目山口組内部の人事刷新と組織の若返りを促す一方で、対立する組織は依然として健在であり、それぞれの「新年」行事で継続の意思を示しています。業界の注目は、司忍組長が竹内照明若頭にいつ”七代目”を禅譲するのかという内部の動きに加え、真の抗争終結がいつになるのかという外部からの視点にも向けられています。

六代目山口組の一方的な「終結宣言」と組織の若返り

今年4月、六代目山口組は神戸山口組、絆會、池田組といった対立組織との10年にわたる激しい分裂抗争に対し、一方的に終結を宣言しました。この宣言を機に、六代目山口組は組織内の急速な人事刷新に着手し、若返りを図る動きを活発化させています。これにより、これまでの主要な話題が「分裂抗争」そのものであった状況から一転し、「司忍組長が竹内照明若頭に”七代目”を禅譲するのはいつか」という、次代の組織体制に関する憶測が業界内外で取り沙汰されるようになりました。

六代目山口組の司忍組長六代目山口組の司忍組長

対立組織が示す「継続」の意思:新年行事と組織指針

しかし、六代目山口組による抗争終結宣言はあくまで一方的なものであり、対立する組織もその活動を停止していません。六代目山口組が2025年12月13日に新年を迎えるための「事始め」を催し、組織指針として「和親合一」を発表したのと前後して、対立組織も同様に新年の式典を開催していたことが明らかになりました。実話誌記者の話では、神戸山口組は12月中に兵庫県内で井上邦雄組長と直参組長による宴会を開いたものの、新たな組織指針は出さなかったとされています。

一方、池田組は12月14日に本部を置く岡山県で「納会」を開催し、中国の故事成語に由来する「有志竟成(ゆうしきょうせい)」という組織指針を発表しました。この言葉には「強い意志と信念があれば、どんな困難にも打ち勝ち、目的は必ず成し遂げられる」という意味が込められており、池田孝志組長が神戸山口組の立ち上げメンバーの一人であり、六代目側から執拗な標的とされながらも組織を存続させてきた背景から、解散する意図がないことを示す強い意志表明と解釈されています。また、絆會も兵庫県内で「納会」を開き、これまでの指針とは異なる「初志貫徹」を掲げており、織田絆誠会長も組織解散の意思がないことを明確にしています。

警察の継続的な警戒と「特定抗争指定」解除の課題

抗争終結宣言以降、神戸山口組は水面下での活動を続けていましたが、今回のように組織としての表立った活動を見せたことで、警察は引き続き強い警戒を続けるとみられています。前出の実話誌記者は、六代目側の宣言以降、警察が「反六代目」側の組幹部に水面下で接触し、「反六代目側も抗争終結宣言を出すか、一方の組織が解散しない限り、抗争終結とは見なさない」という警察側の意志を伝えたと指摘しています。

現時点で「反六代目」側からの終結宣言は出ておらず、改めて組織の継続意思とも取れる指針が示されたことから、抗争事件こそ発生していませんが、警察は年明け以降も「特定抗争指定」を継続していく可能性が高いとされています。この状況にため息をつくのは、六代目山口組傘下組織の幹部です。特定抗争指定が解除されない限り、六代目山口組は「山口組の象徴」とも言える総本部に戻ることができず、組員たちの士気に影響を及ぼしかねないという懸念が表明されています。総本部改修の期待があっただけに、解除に時間がかかることは組織にとって大きな課題です。中には「総本部を移転すべきではないか」という議論も浮上していますが、移転場所によっては新たな組織分裂のリスクも孕んでおり、山口組に限らず暴力団全体で組員数が減少している現状を踏まえ、「暴力団全体」という大局観を持って行動する必要があるという声も聞かれます。

真の抗争終結までには、まだ相当な時間を要すると考えられます。六代目山口組の内部変革、対立組織の継続的な抵抗、そして警察の厳重な監視が続く中で、日本の暴力団業界の動向は依然として不透明な状況にあります。