「おい! すぐ出られるか? 首里城が全焼や」
侍ジャパンの沖縄での強化合宿取材のため、たまたま那覇市のホテルで宿泊中だった私は早朝、本社からの電話で飛び起きた。現場に到着したとき、すでに正殿は焼け落ち、広範囲に煙が充満していた。麓からは、高台にある城のようすを詳しく知ることはできない。
そんな中、本社からヘリの手配ができたとの連絡が入る。久しぶりの空撮に不安を覚えたが、事の重大さに腹をくくらざるを得なかった。野球取材のために超望遠レンズを持ってきているので装備は十分。那覇空港まで移動する間に、地元紙や地図で情報収集し、撮影の距離や角度、構図を考える。普段より複雑な取材のためか、かえって冷静になれた。
空から見る首里城正殿はもはや原形をとどめず、がれきが広がるだけの更地と化していた。私は極度の高所恐怖症だが、あまりの惨状にヘリに乗っていることを忘れるほど撮影に没頭した。
若かった頃に一度、観光で訪れただけの私でも思い出に暗い影がかかるのだから、首里城をずっとシンボルとして生きてきた沖縄県民にとっての悲しみは計り知れない。一日でも早く心のよりどころを取り戻せるよう再建を願うばかりだ。 (写真報道局 宮沢宗士郎)