石油輸出国機構(OPEC)の盟主であるサウジアラビアが、世界一の産油国となった米国に秋波を送っている。サウジはロシアなどと歩調を合わせた原油生産量の削減で原油価格の引き上げを狙うが、この10年で生産量を倍増させた米国の動向を無視できないためだ。これに対するトランプ米大統領はガソリン価格の値上がりを警戒し、原油価格は安くあるべきだというのが持論。ただ、トランプ氏はこのところ、減産に動くサウジへの目立った批判を避けており、本音ではサウジ同様に原油高を望んでいるとの見方もある。
「オクラホマやテキサスにはたくさんの良い友人がいますよ」
サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は2019年12月6日にウィーンで開かれた記者会見で、米国の産油地域の名前を挙げて協調へのラブコールを送った。
記者会見ではOPECとロシアなど10の非加盟産油国による協議「OPECプラス」が減産幅の拡大で合意したことが公表された。1バレル=50ドル台で推移していた原油価格の引き上げが狙いだ。
しかし、18年にロシアとサウジを抜いて世界一の産油国となった米国はOPECプラスに参加していない。シェールブームに沸いてきた米国の同年の生産量は日量1099万バレルで、08年の500万バレルから倍増。原油価格の上昇にブレーキをかける要因となってきた。
実際、ニューヨーク原油先物市場の指標銘柄は記者会見があった6日に1バレル=59.20ドルと約2カ月半ぶりの高値を付けたものの、その後は60ドルの壁を越えられない状況が続いた。13日に米中の貿易協議が「第1段階」の合意に達すると、世界経済の不透明感が弱まったとして60ドルを超えたが、市場関係者の間では「OPECプラスの減産幅拡大は値動きに大きな影響を与えなかった」ともみられている。
持論は原油価格引き下げ
一方、サウジとは対照的に、トランプ氏はこれまで「原油価格は安くあるべきだ」との持論を繰り返してきた。19年4月26日には記者団に対して、「ガソリン価格を下げなければならないとOPECに言ってやった」と発言。18年7月にはツイッターへの投稿で「市場を独占するOPEC」が価格を引き上げていると主張し、「今すぐ価格を下げろ!」と圧力をかけた。