昨今の採用難時代を背景に企業が頭を悩ませているのが、学生の「内定辞退」です。ある調査によれば、内定を出した学生のうち7割近くの学生が辞退したというデータもあります。大企業も含んでの数字ですので、意外と思う方もいるかもしれませんが、現在の採用現場の現実なのです。背景は何なのか。個人的な見解を述べさせていただきたいと思います。
一つ目は、学生の「試活」です。試活とは何かと言いますと、そもそも入社するつもりは一切ない状態で、志望企業の選考に万全の状態で挑めるよう、練習として選考に参加すること、つまり「お試しの就職活動」です。
毎年、就職内定率や大卒求人倍率は過去最高レベルと報道され、「売り手市場」と言われていますが、データで出る数値は表面的なもので、(1)人気企業の倍率は就活氷河期とほとんど変わらない。(2)内定獲得できる学生とできない学生で二極化している-のです。このことを学生は理解しています。
そのため就職活動が失敗してしまうリスクに備えて、数多くの企業で練習を繰り返し、万全を期して志望企業に挑む試活が増えているのです。当然、練習として挑んだ企業から内定を獲得することもあるでしょうが、最終的に志望企業から内定を獲得すると、練習で受けた企業は辞退することになります。
二つ目は、「入社したい企業からの内定を目指す」から「内定した企業から入社したい企業を選ぶ」といったマインドに、学生が変化している点です。
バブル期は業績が絶好調だった金融や商社、日本経済を牽引していた電機メーカーにあこがれ、人気が集中していました。しかし、最近は電機メーカーや金融を避け、IT業界やサービス企業を志望する学生が増えるなど人気業種が多様化しています。
また、以前からある問題だと思いますが、「やりたいことがない」「志望企業が選べない」といったケースは多々存在します。どの企業に行きたいのか考えることに疲れ、とりあえずネームバリューのある企業を受け、結果が出てから入社する企業を選ぶ学生が増えているのです。