自動車関連企業の労働組合で構成する自動車総連は9日、令和2年春闘交渉での要求方針に、企業内最低賃金を「18歳で月額16万4千円以上」とする労使協定締結を初めて盛り込むことを決めた。基本給を一律引き上げるベースアップ(ベア)については昨年に続いて統一要求額は示さず、各労組の事情を踏まえ定期昇給分なども合わせた絶対賃金額を重視した要求をしてもらう考え。
同日、名古屋市で開いた中央委員会で決めた。横並びの平均ではなく、底上げと大手・中小の格差是正を同時に推進することで、全体の賃上げを図る狙いだ。
法定最低賃金が時給1千円を超えつつある中、1100円程度で換算すれば月額賃金はおよそ17万7千円となるが、総連内の18歳平均は約16万4千円といい、企業内最低賃金のさらなる引き上げや未達企業での底上げを図る。現在76%の協定締結率の向上も目指す。森口勲副事務局長は「計79万人の総連での底上げは業界全体や他の産業にも波及する」と強調。交渉マニュアルを策定して各労組を支援するとした。
ベア統一要求額は昨年から示さない方針に転換。高倉明会長は中央委に先立つ記者説明会で、昨年春闘での平均要求額はベア分、総額とも前年より増えたとして「上げ幅だけの議論では格差はなかなか縮まらない。方針を変えたことで各労使で実態に沿った議論が行われ、効果が出た」と継続する理由を説明した。
一方、トヨタ自動車労組が人事評価に応じて従来よりベア額に差がつく制度の提案を検討していることについて、高倉氏は記者団に「自動車業界の賃金制度は年功だけでやっているところはなく、すでにそうした方向。一律配分の世の中ではなく、動いている」と語った。一方で「評価の納得性や公平性は非常に重要で、労使で議論が必要だ」と指摘した。