働き方改革への対応は万全か? 労務管理の専門家・社労士が語るポイント



その他の写真を見る(1/2枚)

 テレワークなど柔軟な勤務形態や生産性向上が話題になるなか、企業の「働き方改革」が改めて問われている。昨年4月に大企業へ時間外労働の上限規制がスタートし、今年4月には中小企業への上限規制の適用や、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の待遇格差解消も始まる(中小企業へのパートタイム・有期雇用労働法の適用は来年4月から)。

 働き方改革が本格的に動き出すこのタイミングは、自社の労働時間や賃金制度を見直す絶好の機会だ。経営者やビジネスマンが押さえるべきポイントについて、労務管理の専門家である全国社会保険労務士会連合会の奥田久美・働き方改革推進支援本部長に聞いた。

労務管理の2つの課題


全国社会保険労務士会連合会 働き方改革推進支援本部 奥田久美 本部長
全国社会保険労務士会連合会 働き方改革推進支援本部 奥田久美 本部長
その他の写真を見る(2/2枚)

 働き方改革は働く人々が、それぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できるようにするのを目的としている。日本企業は「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「働き手のニーズの多様化」に直面し、生産性向上や就業機会の拡大などが不可欠になっているためだ。

 企業の労務管理における主な課題は「労働時間法制の見直し」「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」の2点になる。

 労働時間法制の見直しはワーク・ライフ・バランスの実現を目指し、時間外労働の上限を原則月45時間年360時間とする上限規制や、年5日の年次有給休暇の確実の取得などが含まれる。このうち年次有給休暇は従来、社員が申し出る方式だったが、昨年4月に中小企業も含む全企業を対象に、経営側が取得時季を指定するよう制度を変更。経営側は年次有給休暇が10日以上ある社員に、労働者からの希望や計画年休、時季指定のいずれかの形式で年5日間は取得させることが義務化されている。

 さらに、今年4月からは、残業時間の上限規制が中小企業にも適用となるため、業務の効率化や、生産性向上などの対応が急務になっている。

 一方、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保は、いわゆる「同一労働同一賃金」が大きな柱になる。同一企業内で正社員と、パートタイムや有期雇用、派遣ら非正規雇用労働者の不合理な待遇格差をなくすことが狙いだ。4月から大企業でスタートし、2021年4月からは中小企業にも適用される。

 大企業に比べて人材が限られる中小企業には猶予が設けられているが、改革のスピードが速く、意識も共有しやすいという強みもある。国内の雇用のうち約7割を担う中小企業・小規模事業者の着実に実施できるかどうかが改革の真価を問うことになる。

 これらの取り組みは成長と分配の好循環を構築することで、働く人一人ひとりがよりよい将来の展望を持つことを目指している。

全国の相談窓口「働き方改革推進支援センター」

 ただ、社内の見直しを進めるうえで、実務上の問題や疑問が生じることは多い。このため経営陣や労務管理者の頭を悩ませる問題を相談できる窓口が全国に設置されている。

 厚生労働省が全国47都道府県に1カ所ずつ設置している「働き方改革推進支援センター」だ。

 センターでは「長時間労働の是正」「同一労働同一賃金など非正規雇用労働者の待遇改善」「生産性向上による賃金引上げ」「人手不足の解消に向けた雇用管理改善」━という4つの取り組みを支援。窓口や電話、メールで相談を受けるほか、約2100人の社労士など専門家が会社に出向く「出張相談」も行っている。しかも、これらのサービスは無料なので、気軽に相談できる。

 働き方改革に悩まされている、進め方を迷っているなどの課題を抱える経営者は、この機会にぜひ活用されることをお勧めする。

働き方改革推進支援センターの詳細はこちら

提供:全国社会保険労務士会連合会



Source link