阪神・淡路大震災からまもなく25年。この間、国内では東日本大震災で甚大な被害を受け、南海トラフ巨大地震への懸念も高まる。近年は地球温暖化の影響とみられる気象の極端化で、強大な台風、記録的豪雨による災害も相次ぐ。震災の教訓は生きているのか。災害に強い国土づくりに何が必要なのか。これらをテーマに産経新聞が実施した被災地でのアンケートの分析に当たってきた大阪市立大特任教授の宮野道雄氏、全国初の防災教育の学科を創設した兵庫県立舞子高校卒業生の宮本好氏、震災報道に携わってきた産経新聞編集局の上坂徹編集委員が対談。産経新聞が今回、神戸市内で実施した防災意識を尋ねるアンケートについても意見を交わした。
■「生きた声」行政のヒントに
--被災地アンケートの意義は何でしょうか
宮本 「神戸を離れたくない」という人が9割を超えた震災から1カ月後の調査からは、被災者の地元への愛着心が分かりました。東日本大震災で津波被害に遭った中学生が「震災前まで田舎と思っていたけど海で遊べなくなったら海が恋しい」と話していた。震災を機に地元の魅力を感じていた。生まれ育った町を愛する人が多いと知ることは大きな意味があると思う。
上坂 震災直後だから「こんな怖い場所から離れたい」という人が多いと思っていましたが、全く違う結果。これは驚きでした。
宮野 「被災者が自分の地域に帰りたい」という気持ちは復興への大きな支え。暗い面だけでなく、被災者の力になれるような調査を目指していた。
宮本 私は震災時、母のおなかの中だったが、東日本や熊本地震の被災地に行ったときも被災者から同じものを感じました。被災者が思い返すのはやはり故郷なんだなと。
--アンケートはどのように生かされたのでしょうか
宮本 数字だけポンと出されても数字の大きい部分しか伝わらないが、積み重ねたからこそ本当に重要な小さな声が拾えたこともあったと思う。行政側もどこに支援が必要かを分かったのではないでしょうか。
上坂 ほかにも光に敏感な人がいる避難所で照明の光はどうあるべきかも調査しましたね。
宮野 アンケートにはソフト対策のノウハウが詰まっていて、行政のヒントにしていただいた。
--今後求められる災害報道はどんな形でしょうか
宮野 失敗した点だけでなく、成功した点も報じてほしい。昨年の台風も大阪湾の河口防潮水門があったおかげで高潮被害を防いだとか、東京も地下放水路があったから水があふれなかったことを伝えてほしい。
宮本 どれだけ時間が経過しても、アンケートで取れるのは生きた声。仮設住宅で底冷えする、足元が寒い、隙間風が寒いなど、そこで拾えなければ生かされなかった声が後の災害で生かされる。被災者にリアルタイムで聞くからこそだと思います。