SBIホールディングスが打ち出した「第4のメガバンク構想」に対し、地方銀行業界では期待と警戒感が交錯している。政府が業界再編を促す中、単独で生き残りが難しい地銀にとって一定の独立性を維持できる同構想は魅力的。ただ、将来的には大規模なリストラを迫られるとの不安も根強く、地銀再生の受け皿になれるかはまだ未知数だ。
全国地方銀行協会の笹島律夫会長(常陽銀行頭取)は、「イメージしている事業が違うのに、単純に一緒になればシステムコストが安くなるということはない」と指摘し、SBIの構想に慎重な見方を示す。
ベンチャー企業の新規株式公開(IPO)などで利益を上げてきたSBIだけに、経営権を握れば、「地元の一等地にある不動産が売り払われてしまうだろう」(地銀大手幹部)と戦々恐々とする向きもある。
ただ、人口減少や超低金利による利ざや(貸出金利と預金金利の差)の縮小で地銀経営は疲弊し、東京証券取引所などに上場する78社の令和元年9月中間決算は54社が最終減益、2社は赤字に転落した。政府は今年の通常国会で、地域の貸し出しシェアが高まる合併や経営統合を10年限定で認める特別法案を出し、再編を強く後押しする構えだ。
実際、昨秋には青森銀行(青森市)とみちのく銀行(同)、福井銀行(福井市)と福邦銀行(同)がそれぞれ包括的な業務提携を発表するなど、再編に向け動きが加速している。地域の名士である地銀にとって競合他行と合併するのは抵抗感があり、全国規模の共同体を掲げるSBIの構想に「関心がある地銀は10行程度では済まない」(政府関係者)とも指摘される。
「(政府要請で経営統合しても)規模が大きくなるだけで質的変換がなにもない」。SBIの北尾吉孝社長はインタビューでこう述べ、競争が少ない地域経済に安住し、環境が悪化しても人員削減など大規模なリストラに踏み切れない地銀の経営体質を問題視した。SBIの構想は、自力で再生策を描けない地銀の駆け込み寺ではとどまらず、大胆な構造改革を迫る“劇薬”になるのは間違いない。