相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で平成28年、入所者45人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元職員、植松聖被告(30)の裁判員裁判の第7回公判が21日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で開かれた。2日目の弁護側の証拠調べが行われた当日は、事件の数時間前に植松被告と会っていた知人らの調書などが読み上げられ、犯行直前の植松被告の行動の詳細が明らかになった。
植松被告が通っていた大学の後輩にあたる女性の調書によると、女性は犯行の数時間前の7月25日午後9時ごろから、植松被告と東京都新宿区歌舞伎町の飲食店で食事をした。元々、食事は同月27日の予定だったが、植松被告から25日早朝に「予定を変更してほしい」と連絡があったという。女性が日程変更の理由を尋ねると、「時が来たんだよ」と答えた。
食事中は「新しい法律を6個作りたい」などと語り、「意思疎通できない人を殺す」「大麻を合法化する」ことなどを挙げた。また、「今日も大麻吸ってきた」とも話し、別れ際には「今日で会うのは最後かも。しばらく会えない」と言ったという。以前は明るく優しいイメージだった植松被告の変わりように、女性は「恐怖を感じた」と明かした。
植松被告の知人の調書も読み上げられた。それによると、犯行前々日の同月24日深夜に植松被告は知人らと大麻を吸っていたが、突然、自分の車に乗ると、猛スピードで走り去った。植松被告は「今日は効きすぎたので、このまま家に帰るわ」と説明したという。
知人の一人は、事件前に植松被告から「障害者には、何億の税金が使われているか知っているか」「いけるなら100(人)、最低でも50は殺そうと思う」などと聞かされていた。知人は本気と受け取らず「包丁は3~4本用意したほうがいい。刺すなら首がいいですよ」などと話を合わせた。
「健常者は殺したくないから、拘束するにはどうしたらいい?」と聞かれた際は、「以前、(自分が)不良に拉致されたときに結束バンドで縛られたことがあった。あれ、マジでやばいですよ」などと返事をしたところ、植松被告は「そうか、結束バンドか」とつぶやいていたという。
事件では、実際に包丁と結束バンドが使われた。
事件より5カ月前の28年2月、植松被告は障害者の大量殺人を予告する手紙を持参し、衆院議長公邸を訪れたことから園を退職、措置入院となった。弁護側は、植松被告を診察した医師3人の診断書を法廷で示した。
診察した医師の一人は、植松被告を「大麻精神病」と、「非社会性パーソナリティー障害」と診断。植松被告の「障害者を抹殺する」という思想は「被告の人格に根付いていると考えられる」としながらも、衆院議長に手紙を差し出すという行動に、大麻が影響を与えた可能性があるとの見方を示した。
これまでに弁護側は、「大麻精神病による心神喪失か心神耗弱」として、無罪を主張しており、公判の最大の争点となっている。