【一筆多論】北東アジアと「ドラえもん」 河崎真澄





50周年に合わせ刊行された「ドラえもん」0巻(左)と「はじめてのドラえもん」(中央)。右は1巻

 何年か前のこと。親しい中国人の大学教授と上海の居酒屋でよもやま話をしていたとき、「そういえばジャイアニズムという俗語を知ってる?」と聞かれた。

 教授の説明によれば、人気アニメ「ドラえもん」に登場するガキ大将の「ジャイアン」に由来する傍若無人な主義を意味する。おなじみのセリフ「お前の物はオレの物、オレの物もオレの物」という利己的な振る舞いの人物や組織、国家まで形容するというのだ。

 日本へ留学経験のあるその教授は、「どこの国とは言わないけどさ、ジャイアニズムと受け取られかねない行動ばかりの国は、嫌われてるんじゃないかな」と半ば自嘲気味に話した。

 たわいもない笑い話だったが、改めて擬人化してみると北東アジアの構造は「ドラえもん」の登場人物の関係に似ていなくもない。

 小学生ながら、体格も声も大きく、オレさま主義のジャイアンを「中国」と考えれば、ジャイアンにいじめられる「のび太」はさしずめ「日本」だろうか。

 そうなると、ジャイアンと徒党を組んでのび太に意地悪してくる「スネ夫」の存在は、「韓国」か「北朝鮮」のようにも思える。ジャイアンはときに、スネ夫をいじめることもある。

 22世紀の未来からやってきたネコ型ロボット「ドラえもん」は、ポケットからひみつの道具を取り出してのび太を苦境から救う。このドラえもんが「米国」といえるかどうか。悩ましいところだが、のび太は困ったとき、すぐドラえもんに頼るクセがついている。

 頼りないのび太にも、好きな女の子がいる。「しずか」ちゃんだ。しずかちゃんの側ものび太に好意は持っているようだが、問題はジャイアン。しずかちゃんを自分のモノにしたいと考えている。ただし、しずかちゃんは強引なジャイアンが苦手なようにみえる。

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