日英、EPAの早期締結急ぐ 英EU離脱で


 英国の欧州連合(EU)離脱を受け、日英両政府は経済連携協定(EPA)の早期締結を目指す。昨年2月に発効した日本とEUのEPAによる関税引き下げなどの優遇措置は、英国の離脱で日英間の効力は移行期間である今年末に失われる。日英両政府はEPAの来年1月の発効も視野に、両国の貿易への影響を最小限に抑える狙いだ。

 「新たな経済的パートナーシップの構築に速やかに取り組む」

 茂木敏充外相は1日、英国のEU離脱を受け、談話を発表。経済の混乱を招く「合意なき離脱」が回避されたことに関し「英国とEU双方のリーダーシップ、特に英国でジョンソン政権が誕生以降、離脱プロセスが大きく進展したことを評価する」と表明した。

 安倍晋三首相と英国のジョンソン首相は昨年12月、英国のEU離脱などをめぐって電話で会談。安倍首相が「野心的な経済パートナーシップの構築に迅速に取り組みたい」と日英EPAの早期妥結に意欲を示すと、ジョンソン氏も「EU離脱後、可及的速やかに議論したい」と応じた。

 EPA交渉の妥結には、数年かかるのが一般的だ。このため日英両政府は、日欧EPAの関税引き下げ水準をベースに交渉を進めることで早期妥結を目指す。

 それでも、「年末の移行期間終了まで時間がない」(外務省幹部)のも事実だ。英国は移行期間前に他国との本格的な貿易交渉はできないが、日英は妥結を急ぐため今年1月から非公式協議に入っている。英国がEUを離脱した後、本格的な交渉に移行する。

 仮に今年末までに日英EPAが妥結できず、また移行期間の延長もできなければ、来年1月以降は日英間の関税が、日欧EPA発効前の税率に戻ってしまう。

 例えば、日本からEU域内への輸出では、10%だった自動車の関税が8年目に撤廃される。1年目は8・8%、2年目からは7・5%に引き下げられるが、EU離脱に伴い英国向けは10%の関税に戻る。

 また、日本のEUからの輸入では、衣類の関税(4・4%~13・4%)は即時撤廃されている。これもEU離脱で英国からの輸入関税は元に戻る。

 英政府は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加も検討しており、日本政府も支持している。ただ、TPPに参加するには日本以外の他の10カ国とも交渉が必要となり、さらに時間を要する。このため、日英両政府はまずは2国間のEPA交渉に注力する。(大柳聡庸)



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