日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効した昨年2月から12月の11カ月間で、EUへの輸出額は、関税を段階的に引き下げ、発効8年目に撤廃する自動車(乗用車)が16・9%増加していることが財務省の貿易統計で分かった。自動車については、ホンダが英工場、トルコ工場の2021年の閉鎖を表明して以降、日本からの輸出を増やすなどしている影響とみられる。牛肉は和食ブームを追い風に34・8%増となった。
一方、輸入については、ワインの輸入額が11・4%増えたことが分かった。ワインの関税が撤廃された影響が大きい。750ミリリットルのワインが1本当たり100円程度安くなった。
スーパーなどは、ワイン売り場に「欧州ワイン値下げ」と書かれたポスターを大きく掲げ、1割値段を下げるなど欧州産ワインを前面に打ち出している。
これまで手頃な価格のワインといえばチリ産だったが、1千円前後の欧州産が並んだことで、「価格に敏感な消費者が、チリ産から欧州産へスイッチした」(メルシャンの長林道生社長)。欧州産強化を打ち出し、他社に先駆け、昨年2月から関税引き下げ分を価格に反映したサントリーワインインターナショナルは欧州産の販売数量が前年比10%増えた。
ただ、ワイン需要全体を押し上げたわけでなく、長林氏は「日欧EPA発効が全体の底上げになるかと期待していたが、そうはならなかった」と残念がった。
この他の品目では、豚肉が11・9%増と増加したほか、チーズも3・2%伸びた。バッグ類も8・2%増だった。為替の影響も受けやすい高級ブランドは、値段を下げたわけではなく、そもそもブランドによって価格にばらつきがあることから、「特別に昨年の欧州ブランドの売り上げが伸びた実感はない」(百貨店)という。
とはいえ関税撤廃や引き下げの効果は、全体的にみれば日本、EU双方に好影響をもたらしているといえそうだ。(飯田耕司、日野稚子)
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欧州連合(EU)欧州委員会は日本との昨年2~11月の貿易概況を発表した。輸出が前年同期と比べ6・6%増、輸入は6・3%伸びた。EU産ワインの輸出は17・3%、バターは47・8%の大幅増となった。(ブリュッセル 共同)