福岡市中央区のホテルニューオータニ博多で4日に開かれた九州「正論」懇話会の第144回講演会では、国際政治学者のグレンコ・アンドリー氏が「平和ボケが日本を滅ぼす」と題して講演した。クリミア半島がロシアに併合された母国、ウクライナと日本の共通点を指摘し「日本は置かれている状況を認識し、それに見合った防衛体制を確立しなければならない」と警鐘を鳴らした。主な内容は次の通り。
2010年から1年間、早稲田大学に語学留学したとき、日本の平和ボケに直面した。東日本大震災が起きた後のグループディスカッションで先生がこういった。「最近の日本が怖い」と。大震災の悲劇を乗り越えるために日本人が団結しようという言い方がすごく怖く、戦前の軍国主義みたいだという。そのとき、これはひどいと思った。
ウクライナと日本の一番大きな共通点は平和ボケだ。平和ボケが国家を滅ぼすというのは、誇張や揶揄(やゆ)ではない。現にウクライナは滅ぼされそうになった。
日本がウクライナと同じようにならないためにはどうしたらいいか。1番大きな問題は、軍事力と防衛だ。日本国憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に-」と書いている。地図をみると、日本の周りには中国、ロシア、北朝鮮、韓国と平和を愛する諸国民ばかりだ。
冗談はさて置き、海の向こうの大陸諸国は、強暴な独裁国家であるだけでなく、非常に強い軍事大国でもある。日本の防衛体制は大陸の勢力と比べてどうか。防衛予算が過去最高といっても、それは昔の日本と比べているだけで、仮想敵国である大陸国家の方が伸び率も大きい。
ウクライナは1991年に独立し、ソ連から非常に強い軍を受け継いだが、それをほとんど放棄してしまった。核兵器は100%、通常兵器もとんでもない規模で削減し、大規模な軍縮を行った。