新型肺炎、中小企業にも影響広がる


 新型コロナウイルス感染拡大の影響は中小・ベンチャー企業にも広がっている。関係者はとにかく「早く収束してほしい」と祈るような気持ちでいる。

 磁石関連製品を手がけるニチレイマグネット(大阪府東大阪市)は中国の広州で磁石シートに使われる磁粉を生産、大阪府八尾市内の工場で製品に仕上げる。主に文房具向け製品の商戦のピークは3月だが、すでにそこにあわせて生産のめどはついたという。ただそれ以降の見通しが立っていない。

 前橋義幸専務は「例えば指定された品番でなくても、類似の性能を持つものに変えてもらえないかといった交渉を納品先にお願いすることになるかもしれない」と話す。

 金属熱処理加工の多摩冶金=やきん=(東京都武蔵村山市)の中国・大連にある工場では、旧正月休み明けの2月2日を仕事始めの予定だったのを10日に変更した。ただ現地の主力取引先となる自動車メーカーの工場の操業再開が10日以降となっており、操業は一部にとどまる見通し。同社は11~16日にシンガポールで開かれる航空機関連の見本市に出展するが、現地では入国制限も厳しく、山田真輔副社長は「商談に影響が出なければいいのだが」と心配する。

 家電ベンチャーのシフトール(東京都中央区)は製品に使われる部品の多くが中国からの調達に頼る。岩佐琢磨社長は「中国以外の国では部品メーカー間の調達・供給網が十分に整っていないため、自社工場を持つような一定の規模の会社以外は使えない」と、中国以外での代替生産の難しさを指摘する。

 そのため日本の町工場にも代替生産を求める動きが出そうだが、簡単にはいかない面がある。大田区の機械部品製造を手掛ける町工場の経営者は平成23年のタイ洪水である大手メーカーから部品の代替生産を引き受けたことがある。「短納期で何度も仕様変更を求められ、仕事を引き受けたものの結局赤字仕事になった。働き方改革への対応もあり、できれば無理な仕事は引き受けたくない」と打ち明ける。

 資金繰りの悪化を懸念する中小・ベンチャー企業が増えることが予想されることから、中小企業庁は「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」を各地方経済産業局や政府系金融機関、商工会議所などの商工団体に設けた。(松村信仁)



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