【ワシントン=塩原永久、北京=三塚聖平】米国と中国の「第1段階」の貿易協定が、米東部時間14日午前0時(日本時間同日午後2時)過ぎに発効した。米中は輸入品にかけた追加関税を互いに一部軽減し、1年半を超えた貿易摩擦は「一時休戦」に入った。ただ、新型コロナウイルス流行の影響で中国が約束した米農産品購入が遅れる可能性が浮上しており、協定の実効性がさっそく問われる局面も想定される。
両国政府は2018年春から貿易協議を断続的に進め、今年1月中旬、「第1段階」と位置づけた部分的な貿易協定に署名した。
14日の協定発効に伴い、米国は中国からの輸入品3700億ドル(約40兆7千億円)分にかけた制裁関税のうち、19年9月に発動したテレビや服飾品などを対象とする1200億ドル分の税率を、15%から7・5%に半減した。トランプ米政権が対中関税を軽減したのは18年7月に貿易摩擦が本格化して以降初めて。
中国も米側と同じタイミングで、肉類や大豆、原油など約750億ドル分の米国製品に掛けている追加関税率を軽減。19年9月に追加関税を課した製品が対象で、追加関税率が10%の場合は5%に、5%の場合は2・5%にそれぞれ引き下げた。これ以外の措置については、継続するとしている。
中国政府は「中国と米国の経済・貿易関係の健全で安定した発展を促進するため」の措置と強調している。
第1段階の協定は、中国が米国からの農産品や工業品などの輸入を2年で2千億ドル増やす数値目標を盛り込んだ。中国は知的財産権保護を強化し、外国企業に対する技術移転強要を是正するが、産業補助金撤廃などの構造改革問題は第2段階の協議に先送りされた。
一方、1月下旬以降、新型コロナウイルス問題で、中国国内の物流や生産に混乱が拡大。米政権で「少なくとも今年の輸入規模に影響する可能性がある」(オブライエン大統領補佐官)などと、中国側が協定を履行できるか懸念する声も出ている。