在日ロシア通商代表部の幹部職員の求めに応じ大手通信会社「ソフトバンク」元社員が機密情報を持ち出したとされる事件で、元社員の荒木豊被告(48)=不正競争防止法違反罪で起訴=が「情報提供の報酬は最高で20万円ほどだった」などと供述していることが15日、捜査関係者への取材で分かった。警視庁公安部は情報の機密性によって報酬額が変わったとみて、スパイ活動の実態解明を急ぐ。
機密情報を得たとされるのは、在日ロシア通商代表部のアントン・カリニン幹部(52)。外交特権があり、警視庁の出頭要請に応じないまま10日に日本を出国した。公安部は、ロシア対外情報庁(SVR)で他国の科学技術の入手を担うグループ「ラインX」のメンバーだった疑いがあるとみている。
荒木被告は昨年2月と3月、同社サーバーにアクセスして電話基地局関連の情報を不正取得したとして逮捕、起訴された。捜査関係者によると、20万円は、2月に荒木被告が不正取得した情報への対価として現金で支払われたとみられる。会社パンフレットのような公開情報を渡した際の報酬は数万円だったという。
公安部は同法違反の教唆容疑でカリニン幹部を書類送検する方針で、捜査を進めている。