日本銀行の黒田東彦総裁は産経新聞との単独インタビューで、新型コロナウイルスの感染拡大などで世界経済は「下方リスクが大きい」と強調した。感染拡大の日本経済への波及経路として、中国向け輸出、サプライチェーン(供給網)、訪日中国人の動向の3つをあげて懸念を示した。黒田総裁は「実体経済への影響を注視する」と述べたが、問題が長期化すれば日本経済に大きな逆風となる。
昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は消費税増税や自然災害の影響などで、5四半期ぶりのマイナスになった。それでも黒田総裁は、堅調な雇用や消費動向などをあげ、「今年の成長率は順調な1%程度ではないか」と指摘。世界経済についても、米中貿易協議の第1段階の合意や、英国の欧州連合(EU)からの合意なき離脱の回避、半導体などIT関連の景気循環の好転などをあげ、「少し良くなったと思っていた」と説明した。
だが、そこにリスク要因として突然浮上したのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。中国や世界経済が低迷すれば対中国輸出や国内設備投資の減少が見込まれ、中国からの部品供給の停滞は国内生産にも影響する。訪日中国人の支出減少もマイナスだ。市場の一部では、すでに今年1~3月期の実質GDPもマイナス成長が予想されている。