生活家電大手の象印マホービン(大阪市)は19日、同市内で定時株主総会を開き、中国の生活家電大手「ギャランツ」首脳の投資ファンドが筆頭株主として提案していた、日銀出身で弁護士の長野聡氏を社外取締役に選任する議案は否決された。
一方、長野氏の選任に反対する象印側が提案した、サントリーホールディングス副会長の鳥井信吾氏を社外取締役に選任する議案は可決された。
株主総会では、株式約13・5%を保有する筆頭株主のファンドが、低迷する象印の業績を改善するため海外事業の拡大を求め、海外勤務経験のある長野氏の社外取締役への選任を提案。ギャランツの梁恵強副会長らが出席した。
ギャランツ側は今回の株主提案とは別に、象印との協業も模索。株主総会の質疑応答では、海外市場でのシェア拡大策として他企業との業務提携などを挙げ、経営陣は「補完関係や相乗効果が得られる可能性があれば積極的に検討する」と回答した。
株主総会後、報道各社の取材に応じた梁副会長は「提案が可決されなかったことは残念だが、超長期的な株主として会社の将来性に期待している。象印には経営資源を新たな技術の研究開発に投資することを強く望む」と話していた。
ギャランツは中国・広東省に本社を置き、1978年に梁恵強副会長の祖父、梁慶徳氏が羽毛製品の生産輸出会社として創業。90年代以降、生活家電事業に参入し、現在は電子レンジやエアコン、炊飯器などの白物家電を中心に生産を手掛けている。他社から請け負う相手先ブランドの生産(OEM)を含めると電子レンジの生産台数は世界有数で、家電製品全体の生産能力は年間5千万台以上という。
中国国外では米国や欧州など100以上の国・地域に拠点を持ち、2016年1月に日本法人を大阪市に設立した。電子レンジや炊飯器などの研究開発を目的とし、パナソニックの家電部門の社内カンパニーで副社長を務めた経歴のある香島光太郎氏が研究開発センターの所長に就任。同社やシャープなど日本メーカー出身の技術者の採用を活発化している。
国内家電メーカーの関係者は「象印といえば、日本では『良質な家電』というブランド力がある。電子レンジで世界的なシェアを持つギャランツが象印と提携して中国市場などで展開すれば、国内の家電メーカーにとっては大きな脅威になるでのは」と警戒している。