企業の悩みを聞いて、業績向上に向けた助言をする経営相談所「岸和田ビジネスサポートセンター Kishi-Biz(キシビズ)」が、大阪府岸和田市港緑町の商業施設「岸和田カンカンベイサイドモール」内にオープンした。市が設置した施設で、「二人三脚」の姿勢で実践的なアドバイスを提供するのが特徴。無料で何度でも相談できる。同様の企業支援モデルが運営されるのは、大東市に次いで府内2例目となる。(牛島要平)
「値段が高くても本物の桐たんすを売り続けたい」
今年で創業101年の老舗、田中家具製作所(岸和田市荒木町)の田中由紀彦社長(57)は2月中旬、キシビズを訪れてそう訴えた。湿気や虫に強く、防火性に優れる桐たんす。同社は良質な無垢材を使用し、部材の組み立てでは伝統の「手組み」にこだわる。しかし、近年は機械で大量生産された安価なたんすに押されているという。
田中社長の話に耳を傾けた相談員は、こう切り出した。「高い技術を“見える化”しましょう」。コンパクトな「たんす預金用のたんす」や「高級腕時計の保管ケース」をつくり、比較的手ごろな値段で提供してはどうか。
「技術をPRするきっかけになる。ひいては(本業の)衣装たんすの取引先拡大にもつながる」。提案を聞いた田中社長は「なるほど」とうなずき、次回の相談で具体的な計画を話し合うことになった。
キシビズは、市や岸和田商工会議所などでつくる協議会が運営。大手人材サービス会社で採用や転職を支援してきた経験がある藤原豊和氏(41)が、応募者154人の中からセンター長に選ばれた。
市内外の企業を対象に、課題の指摘にとどまらず具体的な成果が出るまで継続サポートする。しかもコンサルタント料を取らないため、企業はコストを気にせずに相談できる。キシビズの経費は市が負担する。
センター長は年度ごとの契約で、1年間の評価を受けて契約継続の可否が判断される。藤原センター長は「企業のオンリーワンの強みを見つけ、事業が上向きになるまで伴走したい」と意気込む。
こうした支援手法は、平成20年8月に静岡県富士市が設立した「富士市産業支援センター f-Biz(エフビズ)」がモデル。エフビズは開設以降、7割の相談者が売り上げを伸ばした。
各地の自治体が「ご当地Biz」を設立し、キシビズは全国23カ所目。岸和田は農漁業を基盤に木材やガラスなどの工業も発展してきたが、商店街はシャッターを下ろしたままの店舗が目立つ。
永野耕平市長は「街の復興には、個々の企業が力をつけるしかない。企業ごとに密着した提案ができるキシビズは有効だ」と、地域の産業再生に向けた期待を語る。