「同期のサクラ」「過保護のカホコ」など大ヒットドラマで知られる脚本家の遊川和彦(64)が、脚本だけでなく監督も手がけた映画「弥生、三月-君を愛した30年-」が、20日から全国公開される。高校の同級生の男女の30年にわたる人生の歩みを、3月の出来事だけに絞って描く。作品に込めた思いを遊川監督と主演の波瑠(はる)(28)に聞いた。(石井健)
脚本家の遊川。映画監督は、これが2作目。
「僕は、もともと映画監督になりたかったんですよ。なりたい順でいうと、脚本家は2番目」
最初の「恋妻家(こいさいか)宮本」(平成29年)は原作があったが、2作目は自作の恋愛ものを撮りたかった。あるひと月に限定して描いたら面白いだろう。ドラマチックなのは、やはり3月か。寒い日を耐えながら、暖かい日が来るのを信じて生きる。それが3月だ。卒業式もあり、桜はつぼみを膨らませ、花開く。そして、9年前には東日本大震災もあった。
「震災以前と後とでは、日本は大きく変わったような気がしている。あのときのことを、今一度思い出し、生きるということについて考えたかった」
昭和61年3月1日に出会った高校生の弥生(波瑠)と太郎(成田凌)の平成、令和を3月の出来事だけでたどる脚本をしたためた。
弥生役選びは難航した。高校生から初老までを演じる設定が、女優陣から嫌われた。候補に波瑠の名前が挙がったとき、遊川監督は「真っすぐで純粋なイメージが、弥生にぴったりだ」と膝を打った。
遊川監督に直談判された波瑠は、「作品にかける熱意のかたまりのような遊川さんとご一緒できる機会はとても貴重」と、その場で引き受けた。