小泉進次郎防衛相の「覚醒」:高市政権下での変貌と未来への課題

高市早苗政権で4度目の入閣を果たした小泉進次郎防衛相の「覚醒」が、政界で大きな話題を呼んでいます。これまでとは異なる毅然とした答弁と、そこから伺える変貌は、多くの注目を集めています。

驚くべき国会答弁での変貌

この「覚醒」が最も顕著に示されたのは、国会での質疑応答の場でした。政治部デスクによると、11月7日の衆院予算委員会で、首相が立憲民主党の岡田克也元外相の台湾有事に関する質問に対し、「戦艦を使って武力行使を伴うものなら存立危機事態になり得る」と答弁し、波紋を広げました。政府が長らく台湾有事の事態認定を曖昧にしてきた中で、この発言は従来の政府見解を踏み越えるものとして、立憲民主党からの反発と答弁撤回要求を招きました。

その3日後、小泉防衛相の変貌はより印象的に映し出されました。防戦一方の首相とは対照的に、小泉氏は立憲民主党の大串博志衆議院議員に対し、「今年の総裁選ではなく去年の総裁選での(高市氏の)発言を引いて(立民から)指摘を受けるのは妥当ではない」「立民の皆さんが何を求めているか、私にはよく分からない」と、力強く反論したのです。この明確な反論には、出席者からも感嘆の声が上がりました。

以降、小泉氏はどんな質問に対しても「すべての情報を駆使した上ですべての判断をする」という一貫した姿勢を貫きました。この論理的でありながら歯切れの良い答弁は、彼の評価を一気に高める結果となりました。国民民主党の榛葉賀津也幹事長も11月14日の会見で、「小泉さんは覚醒した感がある。堂々と自分の言葉で良い議論ができている」と高く評価しています。

防衛相として国会で答弁する小泉進次郎氏防衛相として国会で答弁する小泉進次郎氏

首相は、総裁選での対抗馬を内閣や党の要職に登用することで政権の安定を図ってきましたが、小泉氏の防衛相起用には当初、懸念の声もありました。環境相時代に国際会議で気候変動への対応を「セクシーに」と発言したような、軽妙な姿勢では防衛相の重責は務まらないと見られていたためです。

「覚醒」の背景にある指導者たち

小泉氏の豹変の背景には、特定の人物の存在が指摘されています。閣僚経験者によると、彼の「育ての親」は同じ神奈川県選出の菅義偉元首相とされていますが、実際には大島理森元衆議院議長の影響が強いとのことです。1年生議員だった小泉氏に、政党政治家としての心構えを基礎から教え込んだのが大島氏でした。大島氏は小泉氏の父である小泉純一郎元首相のもとで、党国対委員長や農水相を歴任した経験があります。

このような経緯から、小泉氏は現在も無派閥を貫いているものの、「あえて答えれば私は大島派」と公言するほど、大島氏に心酔しています。先の総裁選出馬の際も大島氏に相談し、高市内閣への入閣時には「閣内にいる間は高市を全力で支えろ」との助言を受けていたようです。このアドバイスが、今回の「覚醒」の大きな要因となっている可能性が指摘されています。

防衛相としての未来と課題

しかし、小泉防衛相の前途には、依然として多くの課題が横たわっています。再び政治部デスクによると、首相は10月の所信表明演説で、令和9年度に防衛費をGDP比2%に増額する目標を今年度中に前倒しすると表明しました。しかし、トランプ政権は3.5%への増額を求めているとも報じられており、この目標達成には財源問題が再燃することは必至です。もし米国に唯々諾々と従うような事態になれば、小泉防衛相への風当たりは強まるでしょう。

また、歴代内閣において防衛政策は官邸主導が常とされています。そのため、たとえ政策がうまくいったとしても、それが小泉氏の手柄となることは難しいのが実情です。一方で、万が一自衛隊で不祥事が発生すれば、彼が頭を下げる立場に追い込まれることになります。失言ももちろん御法度であり、その言動には常に細心の注意が求められます。宰相への道は、数多の不条理に耐え、乗り越えてこそ開かれるものと言えるでしょう。

参考資料