映画「もみの家」 少しずつ心開く少女、南沙良が好演





映画「もみの家」の一場面

 浜辺美波(19)や清原果耶(かや)(18)ら若手女優の活躍が目立つが、「もみの家」は、そんな一人、南沙良(さら)(17)が主演を務める映画だ。富山県の田園の中の自立支援施設で、16歳の少女が閉ざした心を次第に開く過程を四季を通じて静かに描く。(石井健)

 富山市を拠点に活動する坂本欣弘(よしひろ)監督(33)の初めての商業映画。自主製作だった前作「真白(ましろ)の恋」に続いて故郷を舞台に平成30年5月から31年4月まで1年にわたって撮った。

 「地方に住んでいないと作れないものもある。富山出身だからこそできる作品を撮り続けたい」と坂本監督。

 舞台は、自立支援施設「もみの家」。水田地帯に家々が点在する独特の風景の中で、不登校の高校1年生、本田彩花が少しずつ心を開いていく。

 彩花を演じる南は、初の主演映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」で新人賞を総なめにし、テレビCMにも多数出演するなど注目の女優だが、「積極的ではないし、人前で話すのも苦手」と静かな声で控えめにほほえむ。

 ただ、子供の頃から「違う何かになりたい」と女優に憧れ、10代向けファッション誌のモデルになった。「あの時は、なぜか積極的になれた」。カメラの前に立つのも平気だというから不思議なものだ。

 坂本監督は「素晴らしい女優。芝居の勘がいい。絶対に売れっ子になる」と絶賛する。撮影前に「台本と違ってもいい。その場で感じたことをちゃんと表現してほしい」とだけ伝えたが、まさにその通りに演じたという。

 彩花の成長に重要な存在となるハナエを演じた佐々木すみ江は、30年9月で出番の撮影を終え、31年2月に90歳で亡くなった。

 南は、「お芝居に大変な情熱を持った方。ご一緒させていただいた時間は貴重な体験。大切な宝物」と大先輩との短い交流を振り返る。

 撮影では夕日で赤く染まる水田の丘の上からを見下ろす場面の美しさも忘れられないという南は、「普段の生活で、息が詰まる、窮屈だと感じることがある人の心に、何かを残せる」と作品を語る。

 エッセーを書いたり、写真を撮ったりすることも大好き。多芸多才の17歳。

 「お芝居はもちろん、お芝居以外のことでも型にはまらない表現ができる人になりたいです」

 富山県、東京・新宿武蔵野館などでは公開中。大阪・テアトル梅田は4月3日からなど全国で順次公開予定。



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