原油生産量2位のロシアと3位のサウジアラビアによる協調減産が破綻し、両国は市場シェア拡大のための低価格競争に突入した。新型コロナウイルス禍による需要低迷も重なり、原油価格は一時、年初の3分の1となる1バレル=20ドルまで急落。産油国の安定が損なわれれば、世界経済の混乱要因となりかねない。世界最大の産油国、米国のトランプ大統領はサウジとロシアの仲裁を試みるが、先行きは不透明だ。
◇
□サウジ
■ロシアと度胸比べのゲーム
原油価格の維持から一転、安値販売競争にかじを切ったロシアとサウジアラビアの駆け引きを、欧米メディアは「度胸比べのゲーム」と表現する。ともに原油輸出が国庫を支える主要な柱であるにもかかわらず、もうけを犠牲にして市場シェア拡大を狙う戦術であるためだ。
「油価戦争」は3月上旬、石油輸出国機構(OPEC)非加盟のロシアがOPECを取り仕切るサウジとの交渉で、同月末に期限が迫った協調減産の継続を拒否したことが発端だ。サウジ資本の汎アラブ紙、アッシャルクルアウサト(電子版)は4月2日、前日の原油日量生産が1200万バレルを超え、記録的な数字になったと伝えた。ロシアの減産拒否に真っ向から報復した格好だ。
サウジには世界屈指の輸出国として原油市場で影響力を取り戻す狙いもある。ただ、原油価格を1バレル=40ドル前後として予算を組んでいるロシアに対し、サウジは約80ドルと大きな開きがあるとされる。新型コロナ感染拡大のさなかの原油安は、早くもサウジの財政に打撃を与えている。
カタールの衛星テレビ局アルジャジーラ(電子版)は3月末、サウジ政府が新型コロナ対策に数百億ドルを拠出する見通しとなり、イスラム教の聖地メッカのモスク(礼拝所)拡張工事の中断を表明したと伝えた。
ロシアとの安値競争にゴーサインを出したのは、サウジ国内で強大な権限を握るムハンマド・ビン・サルマン皇太子との見方が大勢だ。好戦的な政策を好む傾向があるとされる皇太子だが、今回の判断にはロシアを極端な安値争いに誘い込んで音を上げさせ、協調減産の交渉テーブルに引き戻す狙いも見え隠れする。