丸紅中国法人の鈴木貴元・経済調査総監に聞く「世界経済悪化で中国のV字回復難しく」





丸紅中国法人の鈴木貴元・経済調査総監(三塚聖平撮影)

 中国では1月下旬の春節(旧正月)直前に、習近平国家主席が新型コロナウイルス対応の大号令を掛けたことで経済活動に急ブレーキがかかった。3月に入ると、再発防止策をとりながら労働者の職場復帰や物流回復などが効率的に進められるなど、経済活動が多方面で正常化へ向かった。

 当初は1~3月期を中心に経済成長が急減速するものの、感染押さえ込みに成功して4~6月期にはV字回復するとみられていた。しかし、新型コロナが世界的な流行となったことで、中国国内で感染・経済状況が改善しても世界経済の落ち込みによりV字回復はかなり難しくなった。

 中国のGDP成長率の低迷は4~6月期も続き、2020年通年では前年比0~3%増に下振れする可能性が高まっている。世界の感染状況と経済の悪化が想定以上に進めば、通年でマイナス成長になることもあり得るだろう。中国経済の悪化は、海外旅行者の減少や設備機械の需要減退などを通じて、日本にもマイナス影響をもたらす。

 一方で、中国政府は欧米各国が始めているような思い切った財政・金融刺激策からやや距離を置いている。長期的な成長に今も自信があるほか、過去のような大規模な公共投資でゾンビ企業や不良債権を増やしたくないのだろう。だが、世界経済が景気後退状態になる中で、このような冷静さが続くのか。今後開かれる全国人民代表大会(全人代)の行方が注目される。(聞き手 三塚聖平)



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