日本製鉄は8日、室蘭製鉄所(北海道室蘭市)と九州製鉄所八幡地区(北九州市)の高炉1基ずつを7月上旬以降に一時休止すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大による鋼材需要の減少に対応する。主要顧客である自動車メーカーの生産縮小や建設会社の工事中断が鉄鋼業界にも悪影響を及ぼしている。
八幡の高炉は、送風を停止し、再稼働ができる状態にしたまま止める「バンキング」と呼ぶ手法によって休止する。室蘭は、8月から実施予定だった改修作業を約2カ月前倒しする。ともに人員削減は行わない。
日鉄は、コロナ感染拡大の前から決定していた瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)の第二高炉を含め、今年に入り4基の一時休止を発表済み。想定を上回る鋼材需要減を踏まえ、2基を追加することにした。
これにより、運営する高炉15基のうち6基が休止する異例の状態となる。休止しない高炉も生産を絞っており、会社全体の生産量は3割以上減るという。
同社はこれとは別に、中長期的な需要減を踏まえ、呉地区の閉鎖を柱とする構造改革を行う計画。今回、一時休止の対象となる八幡の高炉も9月末に操業を停止する計画で、このまま再稼働しない可能性が高い。
この日発表した令和2年3月期の連結決算は、最終損益が4315億円の赤字(前期は2511億円の黒字)に転落した。赤字は旧新日本製鉄と旧住友金属工業が統合した平成25年3月期以来7年ぶりで、赤字額は過去最大。米中貿易摩擦を背景にした需要減や原料価格高騰が響き、構造改革費用や資産価値の引き下げも赤字の要因となった。売上高は前期比4・2%減の5兆9215億円だった。
今期見通しについては、合理的な算定ができないとして公表しなかったが、電話会見した橋本英二社長は新型コロナの感染拡大が収束しても需要回復は緩やかで、「上期(4~9月期)は大きな赤字が避けられそうにない」と説明。昨年度に1億トン程度だった業界全体の国内粗鋼生産量は「上期中に収束した場合でも8千万トンを下回る」との見方を示した。(井田通人)