【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領は28日、「中国に関して29日に記者会見する」と述べた。中国の全国人民代表大会(全人代)が28日に民主化勢力の取り締まりのため香港に国家安全法を導入する方針を決定したのを受け、中国に対する制裁措置を発表するとみられる。
トランプ氏はホワイトハウスで記者団に「中国のことは良く思っていない」と語り、中国に厳然とした対応をとる考えを示した。新型コロナウイルス対策をめぐる中国の初動の遅れなども念頭に「世界が損害を被った」と訴えた。
トランプ氏は記者会見の内容に関し具体的な言及を避けたが、米メディアでは香港の人権弾圧に関与した中国政府高官や企業に対する制裁や、関税など香港に対する優遇措置の撤廃などさまざまな可能性が取り沙汰されている。
米政権が香港への優遇措置撤廃などの厳しい対応に一気に踏み切った場合、中国が米国と署名した「第1段階」の貿易合意を破棄する可能性があるとの指摘も出ている。一方、香港での国家安全法の導入が見込まれる今年8月頃までを「経過観察」の期間とし、米政権が徐々に制裁を強化していくとの見方もある。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、米政権は米国に滞在中の中国人留学生や研究者の査証(ビザ)を失効させる措置を検討しているとされる。
一方、クドロー国家経済会議(NEC)委員長は28日、CNBCテレビの番組に出演し、香港への国家安全法導入に関し「見過ごすわけにはいかない。中国に責任を取らせる」と強調。「必要であれば香港を中国と同様に扱うことになる」とし、1997年の香港返還後、関税や金融、証券取引の分野などで香港を中国本土と区別して優遇してきたのを見直す可能性があると警告した。