【主張】SNSのあり方 根本からの議論が必要だ


 トランプ米大統領はツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)運営会社への規制強化を目指す大統領令に署名した。運営会社に幅広く認めた法的責任の免除を見直すよう求めたものだ。

 ツイッター社がトランプ氏の投稿を「根拠がない」と指摘したことへの報復措置とみられ、いかにも短慮である。

 トランプ氏は、運営会社による投稿規制が政治的に偏っていると批判し、運営会社による検閲や編集への法的責任の免除を受けられなくするよう求めた。

 「オンライン上の言論とインターネットの自由の未来を脅かす」としたツイッター社の反論は正しい。政治上の立場で投稿の取捨選択を政権が行えば、それは中国共産党と同じである。

 米通信品位法230条は、SNS上で不適切な投稿があっても運営会社に法的責任は課さない。一方で、投稿の削除やアカウントのブロックを認めている。

 新型コロナウイルスの感染拡大ではSNS上のデマが世界を混乱させた。日本では匿名の投稿による誹謗(ひぼう)中傷で若い女子プロレスラーが自ら命を絶った。

 過激テロ組織の勧誘や違法薬物売買、児童ポルノといった犯罪の温床ともなり得る。悪意の排除に向けた運営会社の自主的取り組みは必要不可欠である。

 こうした事情を全く顧みない、トランプ氏の主張は短絡的であるが、一面では幅広で深い問題も提起している。

 通信品位法230条は1996年、新しい通信メディア産業を保護、育成する目的で制定された。24年を経て、いまや運営会社の多くが米産業界を代表する巨人となった。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コムの「GAFA」と呼ばれるIT企業は巨額の広告収入などを得て巨大産業に成長している。一定の規制は当然である。

 米司法省は昨年、独占禁止法違反の疑いでGAFAの調査に乗り出した。バー司法長官は今年2月、通信品位法230条の見直しにも言及した。

 巨大化した運営会社が恣意(しい)的な主張に傾けば、制御不能の権力を生みかねない。SNSと正しく共存共栄するためのあるべき姿を見直す、根本からの議論が必要である。トランプ氏の主張がその契機となればいい。



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