【ワシントン=住井亨介】トランプ米大統領は11日、アフガニスタンでの米兵らの戦争犯罪を捜査する国際刑事裁判所(ICC、本部・オランダ・ハーグ)当局者に対し、制裁の発動を可能にする大統領令に署名した。ICCが3月、昨年4月に退けた米兵らの捜査を承認したことへの対抗措置だ。
トランプ氏は大統領令で「ICCの行動は米国の主権を侵害する恐れがあり、米国と同盟国の安全保障や外交政策を妨害し、脅かす」と強調した。米国はICCに加盟していない。
大統領令によると、米国民の捜査や訴追に関与したICC当局者について、米国内の資産を凍結し、当局者と家族の入国を制限することが可能になる。
ICCは「法の支配や裁判所の手続きに干渉する試みだ」などと米国の動きを非難する声明を出した。
2002年設立のICCは戦争犯罪やジェノサイド(集団虐殺)、人道に対する犯罪などを扱う。ICCは昨年4月、米兵らの正式捜査を求めた検察官の請求を却下したが、今年3月の上級審が判断を覆した。検察官は、アフガンでの対テロ戦で米兵らが拷問や強姦(ごうかん)などの戦争犯罪を行った疑いがあるとしている。
アフガンはICCに加盟しているが、戦争犯罪は自国で訴追されるべきだとの立場を示してきた。
バー米司法長官は11日の記者会見で「(ICC検察局の)長期にわたる汚職や不正行為を疑わせるに十分な情報がある」と発言。バー氏はロシアの関与にも言及したが、具体的には明かさなかった。
オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も記者会見で「日本や英国、ドイツから改革を求めたにもかかわらず、ICCは役立たずで無責任だ」と批判した。