新型コロナウイルスの流行前、米国では飛行機を利用した「空の旅」が広大な国土を移動する日常手段だった。ところが、コロナ禍がそんな風景を一変させかねない事態を招いた。狭い空間に長時間、多人数が座って旅する機内に感染リスクがあるとして、乗客が利用を控え始めている。
米航空大手にとり、夏季休暇シーズンは繁忙期だが、米旅行サイトのトリップアドバイザーの利用者調査では「自動車で旅する」との回答が44%に上った。旅行中に「接触する人が少なく、感染リスクが低い」(同社)からだ。宿泊先選びでは86%が「清潔さ」が優先事項だと答えた。
航空各社の乗客は一時、前年比9割以上減ったが、移動制限の緩和に伴い、少しずつ乗客が戻ってはいる。それでも、ある大手は7月の運航便数が同25%にとどまるとの見通しで、なお暗雲が漂っている。
米疾病対策センター(CDC)は、機内の換気フィルターの機能で「ウイルスは容易に拡散しない」と分析するが、“密”が避けられない機内での感染リスクには注意を促している。
一方、少人数を乗せるプライベートジェット業界は特需に沸いているそうだ。「超高給取り」の得意客だけでなく、感染を恐れる新規顧客も急増しており、航空業界は明暗が分かれている。(塩原永久)