【シンガポール=森浩】米国と中国の大使館が、東南アジア各国で舌戦を繰り広げている。米国側が中国の南シナ海での覇権主義を批判すれば、中国側は「中国と沿岸国との間に不和を生み出そうとしている」と応酬。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国には米中との距離感に温度差があり、自国の主張を展開することで、各国への浸透を図りたい意向がある。
在ミャンマー米国大使館は18日公表の声明で、中国による南シナ海の実効支配強化や、香港の統制を強化する香港国家安全維持法(国安法)導入を批判した。「ミャンマーにとって、これらは遠い存在に思えるかもしれないが、中国の行動は近隣国の主権を弱体化させる動きの一部である」と警鐘を鳴らし、「米国は重要な課題である衛生状態の改善、民主的制度の強化などについて、ミャンマーとASEANのパートナーだ」と訴えた。
これに対し、在ミャンマー中国大使館は即座に反論し、「(声明の)ひどさと下品さのレベルには驚かされる。極めて非論理的であり、ミャンマーと香港や南シナ海の問題と結びつけ、中国とミャンマーの関係をおとしめようとしている」と反発した。
タイでは米国のデゾンブル大使が14日、地元紙への寄稿で、「中国はルールを無視し、事実をでっち上げ、約束を破るようになっている」と批判。南シナ海は主要な貿易航路であり、自由な航行の重要性はタイの消費者と無関係ではないことを強調した。在タイ中国大使館は同日、公式サイトで「南シナ海の平和と安定を守るための中国とASEANの共同の努力を無視し、中国と沿岸国との間に不和を生み出そうとしている」と反応した。同様の批判合戦はフィリピンでも南シナ海情勢をめぐって繰り広げられた。