韓国の産業銀行が大韓航空とアシアナ航空を統合して「単一国籍航空会社」体制に転換するとの計画を発表した。大韓航空のアシアナ航空買収支援のために産業銀行は韓進(ハンジン)KALに合計8000億ウォン(約755億円)を投資することにした。
産業銀行の李東傑(イ・ドンゴル)会長は16日、オンライン記者懇談会を開き、「産業銀行と韓進グループが合計8000億ウォン規模の投資契約締結を通じて、二大国籍航空会社である大韓航空とアシアナ航空をひとつに統合する国内航空産業再編の第一歩を踏み出すことになった」と明らかにした。
李会長はこの日午前、政府ソウル庁舎で開かれた第25回産業競争力強化関係長官会議に出席し、洪楠基(ホン・ナムギ)経済副総理・成允模(ソン・ユンモ)産業資源通商部長官・李載甲(イ・ジェガプ)雇用労働部長官・金賢美(キム・ヒョンミ)国土交通部長官・ク・ユンチョル国務調整室長・都圭常(ト・ギュサン)金融委員会副委員長・李昊昇(イ・ホスン)経済首経済首席・尹碩憲(ユン・ソコン)金融監督院長らにこのような内容を骨子とするアシアナ航空売却案を報告した。
◆韓進KAL-大韓航空-アシアナ3段階構造
産業銀行が構想したアシナ航空売却取引構造は3段階だ。産業銀行が韓進KALに、韓進KALが大韓航空に、大韓航空がアシアナ航空に資金を投じる方式だ。その後、大韓航空とアシアナ航空は統合する。
産業銀行は先に韓進グループの持株会社である韓進(ハンジン)KALに新株(第三者割当有償増資)5000億ウォンと大韓航空株式を担保とした転換社債3000億ウォンなど合計8000億ウォンを投資する。韓進KALはこの8000億ウォンのうち7300億ウォンを大韓航空が実施する株主割当有償増資に直ちに投じる。
大韓航空は株主割当有償増資を通じて合計2兆5000億ウォンの資金を調達する計画だ。2兆5000億ウォンはこれに先立ってHDC現代産業開発がアシアナ航空を買収することにした金額と同じだ。大韓航空はこの資金でアシアナ航空を買収して統合作業に着手する。アシアナ航空が発行する第三者割当有償増資方式の新株(1兆5000億ウォン)と永久債(3000億)合計1兆8000億ウォン分を買収し、残りの金額は大韓航空とアシアナ航空間のPMI(買収後の経営統合)作業に使うかたちだ。両社のFSC(大型航空会社)だけでなくLCC(格安航空会社)のジンエアー・エアプサン・エアソウルも段階的に統合する。重複事業は整理し、雇用安定などに残りの資金を使う予定だ。
◆グローバルトップ10の国籍航空会社が誕生
今回の取引を通じて誕生することになる統合国籍航空会社は、グローバル航空産業トップ10水準の地位と競争力を備えることになる。IATA(国際航空運送協会)の2019年旅客・貨物運送実績を基準として、大韓航空(19位)とアシアナ航空(29位)を単純合算した運送量は世界7位圏水準だ。産業銀行は、両社がハブ空港である仁川(インチョン)空港スロット占有率拡大を基に、グローバル航空会社とのジョイントベンチャー拡大、新規路線の開発、海外乗継需要の誘致を通じて、外形成長を遂げるものとみている。また、路線運営の合理化・運営費用の削減・利子費用の縮小など収益性向上も可能だと評価した。
李会長は「産業銀行はアシアナ航空の売却不発とコロナ事態深化により国内航空産業の根本的な競争力強化方案について悩んでいる間、韓進グループ側と航空産業再編方向に対する共感を形成し、今回の統合作業を推進することになった」とし「このような悩みの中で年内早期に今回の取引を終えるために努力した」と話した。
◆KCGI「強力な反対」反発予想
市場では産業銀行が構想したアシアナ航空3段階構造が航空産業改編だけを目的にしたものではないと疑っている。私募ファンドであるカン・ソンブ・ファンド(KCGI)側と経営権紛争中の趙源泰(チョ・ウォンテ)韓進グループ会長側を支援するためのものだということだ。産業銀行が韓進KALに対する第三者割当有償増資を実施すれば、韓進KAL株45.23%を保有しているKCGI・バンド建設・趙顕娥(チョ・ヒョナ)元大韓航空副社長など3者連合の持株率は40%台序盤まで下がる展望だ。
産業銀行のチェ・テヒョン首席副頭取はあえて大韓航空ではない韓進KALに増資する理由について「大韓航空の立場では資本市場で統合シナジーをベースに韓進KALが参加する株主割当有償増資方式を通じて、より効果的な大規模資金調達が可能だろうと判断した」とし「韓進KALが大韓航空有償増資に参加しない場合、持株会社の要件である『20%持株保有』要件に達せず、大韓航空・アシアナ航空統合時には持株率がさらに下落することになる点も勘案した」と明らかにした。
◆「趙顕ミン(チョ・ヒョンミン)・李明姫(イ・ミョンヒ)経営不参加…人為的構造調整ない」
一部では統合国籍航空会社を韓進グループ総帥一家に任せることに対する懸念が提起されている。総帥一家が甲質(カプチル、パワハラの一種)・脱税など各種疑惑で実刑まで宣告されているなど、道徳性論争から自由ではなく、単一国籍航空会社の経営を引き受けるには力不足だという指摘だ。
チェ副頭取は「今回の取引を契機に韓進KALおよび主要系列会社の経営陣と系列主の倫理経営を監督するために、独立機構である倫理経営委員会を設置し、相当な水準の権限を付与する予定」としながら「趙顕ミン氏と李明姫氏ら系列主一家は倫理経営委員会の根拠措置に積極的に協力することを確約し、航空関連系列会社経営には参加しないことにした」と説明した。
人材構造調整も主要な関心事だ。新型コロナウイルス(新型肺炎)によって航空業界状況が不透明な中で、二大国籍航空会社が統合すれば重複人材に対する構造調整の必要性が高まるよりほかなくなるためだ。これについて「最も難しい部分」と明らかにしたチェ副銀行長は「現在、両社の重複人材は管理職など間接部門で約800人から1000人程度と推算される」とし「人為的な構造調整はなく、この部分に対しては韓進側からの確約を取り付けた」と話した。