講演するオレクサンドラさん
福岡市でフィットネスクラブを営むウクライナ・リビウ出身の畑瀬オレクサンドラさん(41)が、久留米市で祖国の現状について講演した。「コーヒーがおいしく、みんな普通に生活していました」。両親や友人が住む古里のために、物資不足を補おうと、日本からできる支援を続けている。
【写真】「本当にこんなことが起こるなんて」と嘆くウクライナ出身の畑瀬オレクサンドラさん
オレクサンドラさんは18日、約40人を前に、海外メディアの報道写真や、現地の知人に聞いた状況を元に時折、言葉を詰まらせながら話した。講演会は市民グループが企画した。
18年前に来日し、日本人の夫と結婚。中学生の娘がいる。「私や娘だけ平和な場所にいる。友達やその子は大変な場所にいるのに…」。罪悪感にさいなまれながら過ごしている。
15歳の少女が、爪を剥がされ歯が抜かれた状態で病院に運ばれたこと。名前も分からぬ4人の女性が暴行を受けた状態で亡くなっていたこと。遺体の埋葬すらままならないこと…。連日、悲惨な情報が届く。「ショックで丸1日仕事ができない日もあった」
リビウの薬局に勤める母(63)に日本への退避を勧めたことも。返ってきたのは「私たちは未来のために戦わないといけない。ウクライナを離れない」との答え。「それを聞いて祖国に帰ろうとも思った」が、母親は「帰ってこないで」と告げた。それで「日本から支援しよう」と決めた。
祖国では食料や止血帯、オムツなどが不足。支援物資を一度、隣国ポーランドに送り、陸路でウクライナに届ける。避難民に食事を提供する知人に日本で集めた資金も送っている。
「今のところ知人は亡くなっていない。でも毎日ひやひやしている。何ができるか毎日考えている」。一日でも早く、平穏な日々が祖国に戻ることを望む。 (玉置采也加)
西日本新聞