ウクライナ人パイロットは数ヶ月でF-16を飛ばせる、但し飛ばせるだけ実戦は別

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英国のウォレス国防相はウクライナ人パイロットの訓練が終わる時期について「最短でも35ヶ月かかるため恐らく戦後になる」と主張したが、経験豊富なF-16の元教官も「飛ばすだけなら数ヶ月で可能だが実戦に出るには何年もかかる」と述べている。

機体や兵器の仕組みについて熟練する期間や戦術的な飛行訓練を短縮することは不可能

経験豊富なF-16の元教官だった人物は「ウィングマークを取得したばかりの新人パイロットがF-16を飛ばすには270日間に及ぶ訓練を受けなければならないが、欧米製の戦闘機で500時間程度の飛行経験があるパイロットなら最短69日(機種転換プログラム)でF-16を飛ばせるようになる」と説明、但し「69日」という数字は教官が使用する言語に堪能で、AIM-120などの兵器類に精通し、この兵器を使用した訓練経験者である場合に限られる。

ウクライナ人パイロットは数ヶ月でF-16を飛ばせる、但し飛ばせるだけ実戦は別

出典:U.S. Air Force photo by Master Sgt. Tristan McIntire

さらに69日でF-16を飛ばせるようになるためには一切休暇をとらず、F-16の操縦と安全な離着陸を学ぶための飛行を6回、空対空ミッション15回、空対地ミッション6回~9回、210時間の座学、10回~20回のシミュレーター訓練をこなす必要があり、仮にウクライナ人パイロットが69日という現実的ではない期間でF-16を飛ばせるようになっても「文字通り飛ばせるだけ」で、ここから実戦に不可欠なスキルを身につけるため何年も訓練を積む必要があるらしい。

元教官は「69日の訓練を修了してもF-16を飛ばす資格が得られるだけで、ウクライナ固有のニーズと脅威に基づく新しいシラバスを開発すれば6ヶ月~12ヶ月の訓練で実戦に出られるようになるかもしれない」と述べ、別のF-16パイロット(ポーランドやルーマニアなど東欧諸国のパイロットを訓練を担当した人物)も「ウクライナはF-16を使用したゲームプランを慎重に検討しなければならない」と述べている。

ウクライナ人パイロットは数ヶ月でF-16を飛ばせる、但し飛ばせるだけ実戦は別

出典:U.S. Air Force photo/Samuel King Jr.

このパイロットは「米空軍のパイロット育成プログラムに6人~12人のウクライナ人をねじ込むは容易で、彼が戦場で必要とする特定のスキルに限定したシラバスを提供できる。最新のマルチロール機は扱いやすくても多任務に対応しているためコックピットでの作業負荷は相応に高く、F-16の能力を完全に活かせるパイロットや部隊を立ち上げるには何年もかかるだろう。西側機と旧ソ連機ではレーダーの操作や目標の識別方法が異なり、コックピットディスプレイの表示方法も使用するミサイルの運動性能も仕組みも全く違う」と述べているのが興味深い。

つまりミグやスホーイを飛ばせるウクライナ人パイロットはF-16の基礎訓練を短縮することが努力と根性で可能でも、機体や兵器の仕組みについて熟練する期間や戦術的な飛行訓練を短縮することは不可能なため「ウクライナはF-16を使用したゲームプランを慎重に検討しなければならない=早くF-16を実戦に投入するなら任務を限定して訓練期間を短縮する必要がある」という意味だ。

根本的にMiG-29やSu-27で出来ないことはF-16でも出来ない可能性が高い

ここで根本的な話に戻ることになるが、ウクライナはF-16を手に入れることで何を達成して戦場からどんな利益を得られるのだろうか?

ウクライナ人パイロットは数ヶ月でF-16を飛ばせる、但し飛ばせるだけ実戦は別

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Valerie Halbert

ウクライナ空軍は西側製戦闘機を必要とする理由に「優れたレーダーと長射程の空対空ミサイル(AMRAAMのこと)を搭載した戦闘機でロシア軍機の活動を抑え込む」というゲームプランを披露しており、最も優先するのは前線の上空で活動する空中プラットホーム(対地攻撃に投入されているSu-25、Ka-52、Mi-24/35など)を撃墜することで、次に敵地上部隊への攻撃、その後なら敵戦闘機を狩ってもいいが「大きな挑戦になる」なると述べている。

地上配備型の防空システムで前線の低空域をカバーするため前線に近づくと砲兵部隊に狙われる可能性があり「この問題をF-16とAMRAAMの組み合わせで改善したい」という意味なのだが、この空域はR-37M搭載のMiG-31BMやSu-35Sで支配されているためF-16で状況を改善できるのかは謎だ。

ウクライナ人パイロットは数ヶ月でF-16を飛ばせる、但し飛ばせるだけ実戦は別

出典:Andrei Shmatko/CC BY-SA 4.0

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は「R-37M(射程150km~398km/飛行プロファイルによって射程は変動する)を搭載した戦闘機をクリミアやロシア領の上空に飛ばしてロシア軍は8つの作戦地域をカバーしており、この戦術は非常に効果的でR-37Mに狙われると回避するのが難しく、MiG-31BMとR-37Mの組み合わせは遠距離から低空を飛行する目標と交戦できる」と指摘、実際に低空を飛行していたウクライナ空軍のSu-25(昨年7月)やSu-24(昨年10月)が撃墜されている。

元F-16のパイロットも「ウクライナ全土(占領地域を含む)には夥しい量の地対空ミサイルが存在するため1,000フィート以下の低空を飛行しなければならず、この制限は非ステルス機なら旧ソ連製戦闘機でも西側製戦闘機でも同じで、F-16を手に入れてもウクライナ人が持っている戦闘機とやれることに違いはない」と述べており、F-16のレーダー性能を活かすため高い高度を飛行してAMRAAMで前線の低空域をカバーしようとすればS-400に狙われ、これを避けるため低高度で前線に近づけばR-37Mで狙われるため、根本的にMiG-29やSu-27で出来ないことはF-16でも出来ない可能性が高い。

ウクライナ人パイロットは数ヶ月でF-16を飛ばせる、但し飛ばせるだけ実戦は別

出典:Командування Повітряних Сил ЗСУ

AN/ASQ-213と対応した機体がウクライナに提供されるなら話も変わって来るかもしれないが、機密の塊(イスラエルに輸出している)をウクライナに提供する可能性は低く、これがないと敵防空網制圧任務でAGM-88HARMを統合したMiG-29と大きな違いがなく、このような状況でF-16を対地ミッションに投入しても効果は非常に限定的だ。

シンプルに言えば欧米流の航空作戦に不可欠なワイルド・ウィーゼル機や電子戦機などの各種航空支援や訓練を重ねた航空戦術を欠いた状態で「第4世代機に接近拒否が成立した空域に侵入してこい」というようなものだろう。

ウクライナ人パイロットは数ヶ月でF-16を飛ばせる、但し飛ばせるだけ実戦は別

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Matthew Lotz

因みに米国のディフェンスメディアは「もしF-16提供がゴーサインがでれば非常に限定されたシラバスでウクライナ人パイロットは訓練を行い、最初は無誘導爆弾とAIM-9の基本的な使用法を学んだだけで戦場に向かうことになるかもしれない。これはウクライナが期待しているような効果ではなく、F-16の能力を完全に引き出すためには時間が必要だ」と述べて記事を締めくくっている。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air National Guard photo by Tech. Sgt. Hollie A. Hansen/Released

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