瀬戸内海の穏やかな波間、小豆島の草壁港に、ひっそりと佇む青い船。それは、かつて瀬戸内の海を漂流した「家船」の再生であり、現代アートの息吹を吹き込まれた、木戸龍介氏の手による作品「Inner Light-Floating Houseboat of Setouchi-」です。2025年の瀬戸内国際芸術祭で、静かに、しかし力強く、その存在感を放っています。
廃船からアートへ:家船の新たな物語
かつて瀬戸内海には、船上で生活を営む人々がいました。彼らの暮らしを支えた家船は、時代の流れとともに姿を消し、忘れ去られようとしていました。2020年、広島県尾道市の元漁師から瀬戸内国際芸術祭実行委員会へと寄贈された家船は、アーティスト木戸龍介氏の手に委ねられ、新たな命を吹き込まれることになります。
草壁港に展示された木戸龍介氏の作品
ウイルスが象徴するもの:再生への道筋
全長約12メートルの青い船体。塗装が剥がされ、木肌が露出した部分には、無数の小さな穴が空けられています。これらの穴は、ウイルスやがん細胞をイメージして彫り込まれたもの。木戸氏によれば、ウイルスが船体を侵食することで、本来の機能を失った船に光と空気が入り込み、再び呼吸を始める、という再生のコンセプトを表現しているとのこと。
著名な美術評論家、藤田美咲氏(仮名)は、「木戸氏の作品は、朽ちゆくものへの眼差しが深く、自然と人工、破壊と再生の対比を巧みに表現している」と評しています。
青い光に包まれる夜:幻想的な空間
夜になると、船体は内側からライトアップされます。無数の穴から漏れる光は、まるで星のように輝き、幻想的な雰囲気を醸し出します。静寂に包まれた港に浮かぶ、光に包まれた青い船。それは、瀬戸内の歴史と文化、そして再生への希望を象徴する、まさにアートの力と言えるでしょう。
夜間にライトアップされた家船
小豆島へのアクセス:芸術の島へ
小豆島へは、高松港などからフェリーが運航しています。島内では、坂手港、池田港、土庄港、福田港からバスが利用可能です。草壁港へは、坂手港から臨時バスで約12分でアクセスできます。
瀬戸内国際芸術祭2025:新たな発見の旅へ
瀬戸内国際芸術祭は、瀬戸内海の島々を舞台に3年に一度開催される現代アートの祭典です。自然豊かな島々の風景と融合したアート作品は、訪れる人々に新たな発見と感動を与えてくれます。ぜひ、足を運んで、その魅力を体感してみてください。