アメリカによる関税政策が世界経済、日本経済へどんな影響を及ぼすのかということに注目が集まっているが、それより前に崩壊した中国不動産バブルの影響が、じわじわと世界へ影を落としつつある。ライターの森鷹久氏が、インバウンド景気に沸いているように見える観光地などで始まっている、中国発の不況についてレポートする。
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一杯5千円近くするラーメンが飛ぶように売れるなど、空前の「バブル」状態にあると様々なメディアで報じられてきた北海道屈指のリゾート地・ニセコ。ウインタースポーツのシーズンは終わったが、まだまだ残る手つかずの自然や、美しく澄み切った空気を求め、観光客だけでなく、投資資金も世界中から集まっている。
「こちらが泣くしかありません」
北海道・ニセコエリアで事業を展開する実業家の男性が破顔する。
「ニセコは以前から外国人の間で人気でした。コロナ禍前から不動産や宿泊事業などに資金を入れてきて、今も儲かっていることは確かです。メディアによっては悪く報じられることもありますけど、世界中から人と金が集まっていることも間違い無いですし、地元の方でも恩恵を受けられている方は少なく無いですよ」
しかし、このバブルは静かに終焉が迫りつつあるようだ。リゾートホテルやペンションの新築ラッシュで忙しいはずの、道内工務店の経営幹部が苦渋の表情でこう語る。
「ニセコには、確かに世界中から金が投入されました。私も、北米のリゾート企業や中国系の企業が計画しているホテル建設にいくつも携わったことがあり、それなりに稼がせてはもらいました。しかし昨年ごろから、中国系企業の担当者と連絡がつきづらくなった。すでに工事は始まっていて、資材だって確保済みです。元請けの建設会社によれば、先方は未払い資材や人件費の高騰に対応できないと一方的に通告してきて、その後は音信不通なのだそうです。最初にいくらか支払いはあったそうですが、それきりです」(地元工務店の男性)
道内に拠点を置く、住宅資材販売会社の担当者も同じような状況だと頭を抱える。
「ニセコが中国人に買い占められる、とSNSで話題になるくらい、確かに中国人から人気がありました。弊社でも、中国系企業が進めるリゾート物件にいくつか関わっていて、すでに資材を発注してしまっています。しかし、中国では不動産バブルが弾け、企業も個人も大混乱に陥っている。自国での生活がままならないのに、外国、日本の話なんかどうでもいいと、先方からはっきり言われて唖然とするしかありません」(住宅資材販売会社の男性)