コメの高騰が止まりません。全国のスーパーで販売されたコメ5kgの平均価格は4233円と、17週連続の値上がりで過去最高値に(5月7日時点)。「いまこそたくさん作ってほしい」と思ってしまいますが、そのコメを作る農家は去年、統計を始めた2013年以降で過去最多の“廃業数”となりました(東京商工リサーチ調べ)。
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日本のコメの未来は?実際に農家を取材して見えた苦労や課題を、農業経験のある宇都宮大学農学部・松平尚也助教の見解などを交えてまとめました。
コメ農家の約9割は60歳以上 担い手不足が深刻化
帝国データバンクによりますと、コメ農家の廃業や一時休業は去年42件で、統計開始以来過去最多を更新しました。2023年度のコメ農家の業績は、赤字が25.8%、業績悪化は55.2%で、厳しい状況がうかがえます。
また、高齢化も進んでいます。コメ農家の約9割は60歳以上(2020年・農水省より)で、去年廃業した人のうち約8割が60歳代以上(帝国データバンク調べ)。次世代の担い手不足が深刻化しています。
宇都宮大学農学部・松平尚也助教は「高齢化が進む中で、2030年代に国内の生産で供給ができなくなるのではないかというレポートも出ている。政策課題としても考えなくてはいけない」と現状を危惧しています。
「コメはやるな!」一体何がそんなに大変?
過去に農業に携わった経験がある松平助教は、過去に“新たに農業をやろう”と役場に相談した際、「コメはやるな!」と言われたということです。自治体職員から「やめとけ」と言われるほどのコメ作り、一体何がそんなに大変なのでしょうか?滋賀県近江八幡市のコメ農家・三宅寛穂さん(53)を取材しました。
27ヘクタール(阪神甲子園球場約7個分)という広大な面積でコメを作っている三宅さん。田植えなどの作業は、家族総出でも人を雇わざるをえないといいますが、人件費や機械の高騰が重くのしかかります。
ほかにも広さ分の肥料など、とにかくお金がかかるコメ作り。1年に1回しか収穫できないため、冬にはキャベツなどほかの野菜を育てることで年間の資金繰りをしていて、休みはないといいます。さらに、台風や干ばつの影響を受けることもあり、収穫がうまくいくとは限りません。
“コメ不足”と言われている今の状況を、三宅さんはとても歯がゆく思っているといいます。
(三宅寛穂さん)「僕はまだ53歳で、僕ら世代もまあまあいるんですけど、僕の一回り上とかも多いですし、後継者のいない地区では高齢化問題もあると思う。いきなり『収穫量を上げろ』と言われても、僕らは今が(金銭や体力的に)限界の状態でやっている中で、『これ以上生産量を増やせ』は無理な状態」
そして、本当は、おいしいコメを大勢の人に食べてもらいたいと話します。
(三宅寛穂さん)「ちょっとぐらいコメが上がってもらったほうがコメ農家としては(収入面では)助かる。でも、消費してもらわないと(作っている)意味がないので、もう少しだけ皆さんに我慢していただいて…という状況」